「えぇー!!!!」
「しぃいぃぃ!!!声大きいっ サクラ!」
木之本 サクラの声に、周りは訝しげな表情をしながら振り向く。慌てて自分の口を塞ぐサクラ。そして、奈々に近づいて、周りに聞こえぬよう、小さな声で言った。
「今の話… 本当ですか?」
「うん だってかっこいいじゃん」
「でもあの人は!!」
サクラは立ち上がって、また大きな声を出す。今度は奈々がサクラの口を塞ぐ。学習しろ!と言いたくなるが、こんな純粋さがサクラのいいところだから我慢する。
「サクラ、どうしたの?奈々も…」
李 小狼。サクラの幼馴染でもあり恋人でもあり、奈々のクラスメイトでもある小狼が、近づいて、話しかけてきた。心配性はまだ治ってないらしい。
「小狼 実はね…」
こそこそと耳打ちする。
「えぇー!!!!」
「小狼も声大きいってば!!!」
「ご、ごめん…」
小狼は恥ずかしさに小さくなる。こういうところは子犬みたいで可愛い。しかし周囲は2度にわたる大声に疑問と疑いを隠せていない。悪い事をしているわけでもないので、気にはしないが。
「でね! 今度、月峰神社である、桜祭りに誘おうと思うんだー」
「あの人を…ですか?」
「うん」
小狼の問いに、私は答えた。
「用事あるかもしれないよ?」
「桜祭りは連休の3日間やるもん!1日ぐらい誘えるって」
サクラの問いにもポジティブに答える。サクラと小狼は顔を見合わせて、 はぁ〜 と深い溜め息をついたかと思えば、奈々のほうを向いて、話し始めた。
「おれ達も協力します」
「ダブルデートっていうのも素敵ですよね!」
「小狼… サクラ… ありがとうっ…!!」
持つべきものは、友だ。
キーンコーンカーンコーン・・・
そのとき、ちょうど授業開始のチャイムが鳴った。奈々達はそれぞれの席に戻る。
ガラッ
黒い髪に紅眼の男性が教室に入ってくる。手には出席名簿やらプリントやら。教卓にそれを置き、号令をかける。
そして、この人が、奈々の想い人。
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