―黒鋼の場合―



「おはよー…」



奈々が「まだ眠りたい」と叫んでいる脳を無理矢理働かせて、目を擦りながらテーブルに突っ伏した。
奈々の頭の中ではさっきから眠ろうとする脳と、朝食を食べたいと言う食欲が戦争をおっぱじめていたのだが、遂に食欲が破れ、漂う紅茶の匂いも手伝い直ぐに眠る体制に入る。すると、上から声が聞こえてきた。



「おはよう 奈々」

「ふぁ?」



奈々が重たい瞼を何とか持ち上げ、上を向くと湯気に隠れて顔は見えなかったが、そこにははっきりと黒髪が見えた。



「奈々 そんな所で寝たら風邪引くよ?」



目の前には可愛いポットと、ポットとお揃いのカップを2つ持った黒鋼。2つあるから多分奈々にもお茶を淹るつもりなんだろう。
黒鋼が奈々の隣に座り、紅茶を丁寧に淹れる。奈々の目の前に紅茶が入ったカップが置かれると、次は自分の紅茶を淹れ、砂糖を混ぜてぐるぐるとかき混ぜる。
黒鋼が紅茶を飲もうとした瞬間、奈々の脳が完全に起き、事態が全て脳へと伝わった。



「黒鋼――――――!!??」



よほど驚いたのか、黒鋼の肩が揺れ、持っていたカップがカチャリと音を出す。目を丸くして奈々を見つめている。奈々は奈々でこんなことを考えていた。



黒鋼がヘンだ!!おかしい! 黒鋼は絶対自分で紅茶を淹れて和んだりしない!!ゼッタイ砂糖を大さじ2杯も入れない!私に紅茶を淹れてくれたりしないぃいぃ!!!
指摘すべきかすべきで無いか悩む奈々。夢中になりすぎて、頭を抱えて唸りながら悩む自分がかなり見苦しい事に気付いていない。黒鋼は少し引きながらも奈々に話しかけた。



「ほ、他の紅茶がいい?これはダージリンだけど、他にもディンブラとかキャンディーとかあるけど…」



ガタッ
奈々が椅子が倒れるほど勢い良く立ち上がったせいで、再び黒鋼の肩が揺れた。奈々はそのまま皆の部屋があるほうへと歩き出す。



なんで黒鋼があんなに紅茶の種類を知ってなきゃなんないのよ!!こうなったら頼れるのは…


ファイ!

|
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -