玻璃 Otogibanashi
00000 1st main love365/24 @ 晶音
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早く私を連れ出して
夜が明けてしまう、その前に
硝子の靴は冷たすぎるから
代わりに花でできた指輪が欲しい
Thanks:戦場に猫 IZ ゼローネ
Snice 090329
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動作確認 au SH001
▽▲▽
今日が終わってしまうのが、
明日がやって来てしまうのが、
何よりも、誰よりも怖かった。
私の全てを包み隠してくれる、深い闇のような帳は心地好かった。
それでも、朝日は私にとっては何よりも残酷で、
夜の帳が私の体を冷やすほど、その帳を裂く朝日は私を熱く焼いた。
だから、その帳も嫌いだった。
それに比べて、体温を奪いながら私の輪郭を溶かし行く夕暮れは大好きだった。
太陽が地平線から頭を引っ込めてから、帳が深まるまでの間、その時間だけ私は安らかに息が出来た。
その時間だけが、唯一私が私でいられた。
着飾る度に喜んでくれた王子様の笑顔も言葉も、今は帳を裂く朝日のように痛い。
どれだけ口づけを落とされようと、その口づけを落としてもらえたのは本当の私ではないような気がして。
もっと愛してほしいと、もっと可愛がってほしいと思う度、
着飾る私を奇麗だと髪を梳く王子様が、どこか遠く感じるの。
だって貴方はきっと、私がこんな見て呉れでなければ、見てはくれなかった。
着飾らなければ、きっと愛してはくれなかった。
私が貴方を愛そうとする度、硝子の靴が邪魔をする。
貴方が私を愛する度、本当の私は王子様からは愛してもらえない灰被りになってしまう。
貴方が求めるその夢は、灰被りには叶えられない。
それでも、ねぇ、愛したい。
貴方に寄り添って、貴方の邪魔にはならないから。
貴方の夢を壊したりはしないから。
そう願っても、いつものように朝日は私を焼くから、
連れ出してよ、今すぐに。
逃げるために邪魔な冷たい硝子の靴は割ってしまって構わないから、
ドレスなんて苦しいだけだから裂いてしまって
どうか私を朝日が希望に見えたあの頃まで連れていって。
本当に欲しかったのは硝子の靴なんかじゃない。
貴方にもらえるなら、野に咲く花で作った王冠でさえ、花の指輪でさえ、私には十分だったの。