泡沫

きっと、私を包むこの旭光のような希望は、最初から無かったんだ。
だってほら、始まりを告げる温かなはずの朝日でさえ、今は冷たい。

あぁ、海はこんなにも冷たかったんだ。
禁忌を犯したことを表す二本の足は、この重い海を泳ぐには随分と頼りない。
水が軽かった記憶は、一体どれくらい昔のものになるのだろう。


でも水が軽くはなくても、世界が光を煌びやかに反射させなくても、あの頃のように歌を紡ぐめなくても、地上は素敵なことが溢れていた。

地上には、貴方が居た。


目を瞑れば、指先がプクプクと少しずつ海に溶けていくのが分かった。
それでも、思い出すのはただ一人。


好きだなんて言葉は要らなかった。
ただ隣で笑ってもらえるだけで十分だった。

だから、人間の足を手にしたことを悔やんだことはなかった。


けれど、一つだけ、たった一つだけ心残りがあるの。


一度で良いから、貴方に好きと呟いてみたかった。


▲▽▲





どれ程の時が過ぎ去ったのだろう。
潮風に当てられつづけた髪は、既に指で梳くことも出来ないだろう。

キラキラと輝く海面に、時折船横に当たり弾ける波と、消えゆく沫を見つめては、何度目か分からない溜息を零す。


海を見て、懐かしいと思うのはいつからだろうか。
溶けゆく沫を見て君を思い出すのは、何故なんだろうか。


手に握っていた君と同じ香りのする花は、風にさらわれて海に呑まれていった。


好きだったと、どうかもう会えないであろう君に届くように。


さようなら、

人魚姫















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人魚姫モチーフのデザインだったんですが‥‥あの‥‥随分前のなのでタグも素材も無くしてまして‥‥。
写真で代用しました。
‥‥タグとか頑張ったんだけどな、確か←

人魚姫は大好きな童話の一つなので、またいつかデザインにするかもしれません。


これはアンハッピーエンドですね。


 10/01/10〜??/??/??


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