Disapper tear

 お約束





「みんな、止まって。」

中間辺りに差し掛かった時、ルーティがぴたりと止まった。
何事かと皆が振り返ると、ルーティは真剣な表情で腰の辺りを押さえている。

アトワイトがどうかしたのかと聞けば、財布が重くて動きにくいため、別の物に移し変えたいとのことだった。



『何かと思えばそんな事か。』
「敵でも出たのかと思ったよ。」
「ホーリーボトル撒こうよ。そうすればモンスターも近付いてこないと思うし。」
ディムロスがため息をつき、スタンが間延びした声で笑う。
頭を抱えるリオンにホーリーボトルを差し出せば、彼も渋々腰を下ろした。


「……あっ!」
「ん? …あ……」
休息を取ろうと座る一行の周囲にホーリーボトルの中身を撒いていたアリアは、不意に上がったルーティの声に振り向いた。
そんなルーティの足元に、金色のガルドが次々と散らばっていく。

「みんな拾って! 早く!!」
素早く落ちるガルドに食い付くルーティに急かされ、一行はガルド拾いをすることになった。幸いホーリーボトルが利いていたせいかモンスターは寄ってこなかったが、酷く疲れる結果となった。

「ふう、どうなるかと思ったわ。……ん!?」
麻袋にガルドを戻していたルーティの顔が般若のごとく険しくなる。何事かと彼女に問いかける一行に、ルーティは険しい顔をそのままに一言。
「…あと1ガルド足りない。」




「ルーティさん、あまり走らない方が……地面が崩れたら大変ですから。」
「地面よりお金よっ。当然でしょ。…あ!」
ルーティは残り1ガルドを探してその辺を走り回る。そんな彼女の様子を見て、フィリアが控えめに声をかけた。
だがそれも意味を成さず、フィリアの忠告を跳ねのけたルーティ。地面に光る金色を見つけた彼女は素早く駆け寄るとその金色を拾い上げる。

「……あった!!」
「っ! …ルーティ!」
「カノン? どうしたのよ?」
「そこから動いて! 早く!!」
金色のガルドに頬ずりしそうなルーティに、カノンの声が彼女の名前を呼んだ。
彼は状況の変化に敏感だ。ルーティ周辺の変化に気付き、彼女がそれに巻き込まれることを予想して注意を促そうとしたのだろう。

しかしルーティはきょとりとカノンを見つめるばかり。


「あ、あら?」
ルーティの足元がミシミシと音を立て始めた。
なるほど、カノンが言いたかったのはこのことだったのか。

目を見開いてルーティが周囲を窺う。
ルーティ自身もやっと、自身の置かれている状況に気付いたようだ。地面には次々に亀裂が入り、彼女の逃げる場所がなくなってしまった。



びしり、
嫌な音が周囲に響き渡る。遂にルーティの足は地面から離れた。
この辺り一帯は地盤が非常に脆く、洞窟内でも崩れやすい場所だったようだ。


「危ない! ルーティ!!」
「スタン!?」
飛び込んで行ったスタンはルーティを抱えて、そのまま落下していく。



「うわぁぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
二人の断末魔が響き、一帯は静寂に包まれた。
マリーが開いてしまった穴を覗き込む。そんな中アリアが振り返れば、リオンが盛大な溜め息をついたのだった。


  


prev / next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -