Disapper tear

 ミッドナイトエスケープ




「バティスタ!」
親玉の部屋に入るなり、フィリアが目の前の男を呼んだ。
クレメンテを構えた彼女は震える手をごまかすように強く柄を握る。


「フィリアか!」
「こいつがフィリアの話してた、グレバムの側近?」
「お前が追って来るとはな。ずっと石像になっていれば良かったものを!」
ルーティが首を傾げながら親玉──バティスタを見る。バティスタはフィリアの姿を認めると彼女を鼻で笑った。

「バティスタ、答えて! グレバムはどこなの!?」
「さあな。お前が勝ったら教えてやるよ。」
バティスタは神の眼を取り戻そうと必死なフィリアにそう言うなり武器なのであろう、鉤爪を取り出す。
そして、一番近くにいたアリアに襲いかかった。


「!」
アリアは背中に背負っていた剣で素早くそれを受け止める。刃がギリギリと立てた音はアリアの背中に寒気をもたらした。
一対一で戦ったら……そう考えるとぞわりと悪寒が走る。

「なかなかだが……力がねぇんじゃな!」
「!?」
剣を爪の間に引っ掛けて、バティスタはアリアを軽く放り投げた。落下する中、バティスタがアリアの落下地点に距離を詰めてくるのが見える。
しかしその背後を見て、にやりとあくどい笑みを浮かべてしまったのが自分でも分かった。


「大人しくやられるわけないっしょ!」
「残念でした。」
アリアの声と重なって聞こえたのは、バティスタの背後に迫っていたカノンの声。



「なんだと!? …ぐあぁぁっ!」
首だけで振り返ったバティスタは、カノンの剣に背中を切り裂かれる。
そしてそのまま前のめりに倒れ込んだ。

「……アリア、カノン。」
近付いたフィリアがバティスタにグレバムの居所を尋ねる。しかしバティスタは知らないの一点張りで、こちらに挑発まで仕掛けてくる始末だ。
リオンが溜め息をついてシャルティエを鞘に納める。腕を組んで壁に凭れると、アリアとカノンを呼ぶ。



「街に戻って尋問する。お前たち、こいつを縛れ。」
「はい。」
「りょーかーい。」
投げ渡されたロープと拘束具を受け取り、バティスタの自由を奪う。
フィリアが辛そうな顔でその光景を見ていた。彼女に胸中で謝りながら作業を続ける。

そして一行はバティスタを捕縛し、ノイシュタットへ戻ったのだった。




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