Disapper tear
太陽のように
「ここに…いるんだよね…?」
ポケットの中にある蒼いブレスレットを握り締めて、アリアは小さく呟いた。
アリアの大切な人である少年はこの砂漠の中のどこかにいるはずなのだ。
最後に会ったのは飛行竜任務につく前。
そんな彼は今どこにいるのか、何をしているのか……アリアには知る術もない。
「おーい、アリアー!」
「スタン…」
目立つ金髪がこちらに走ってきた。
近くまで来るとスタンは呼吸を整える。よほど走り回ったのか肩で息をしていた。
「ごめん、探した?」
尋ねればスタンは「心配したんだぞ」と大きな溜め息をつく。それは安心して出たものであって、呆れたようなものではなかった。
「あのな、情報収集が終わったからアリアを呼んでこいって言われたんだけど…」
「なんか情報あった?」
「神の眼がカルビオラに向かったって。ジェイクっていう水夫が二十日ほど前にセインガルドから来た神像を町の外の荷車に運んだって聞いたぞ。」
「そっかぁ…じゃあ次はカルビオラか。」
小さく息を吐き出す。それを見たスタンが心配そうに顔を覗き込んできた。
わざわざアリアの身長に合わせて腰を折り、眉を寄せて空色の瞳がこちらを見る。
「アリア、この間からずっと溜め息ついてるぞ?」
「あ、大丈夫だよ。」
「そっか?」
「うん、だいじょーぶだいじょーぶ!」
首を傾げてまだ納得していない様子のスタンに、無理矢理笑顔を作って向けた。スタンならきっと騙されてくれるはずだ。
「……アリア…」
しかしスタンの反応はアリアの思っていたものとは違っていた。
彼は痛々しいほどに眉を顰めて、悲しい顔をしたのだ。そしてスタンもそれを隠すように笑う。
「…そっか、じゃあ言いたくなったら言ってくれよ。」
「……」
黙ったままのアリアに軽く笑う。そして続けた。
「俺、いつでも聞くからさ!」
自分は“太陽の剣士”と謳われている。自分のどこが太陽なのか想像もつかないが、とにかく名誉なことであるのは変わりないと思っていた。
しかし自分なんかよりもずっと太陽に近いのはスタンなのではないか。
アリアには、そのスタンの笑顔こそ太陽に見えたのだから。
prev / next