Disapper tear

 蒼海に沈みし遺物とは




「ルーティさんは既に強い力をお持ちだから分からないのですわ。」
フィリアが言う。彼女の前には輝かしい光を放つ、一振りの剣があった。


中へと進んだ一行は、最深部でやっとフィリアに追いついた。
最深部の扉は古代文字で“中枢司令室”と記されており、その中に安置されていたのは一振りのソーディアンだった。

扉を開けて中へ進むと、やっとアリアにも声が聞こえた。それは優しい老人の声だった。
そしてディムロスとアトワイトは彼の名を呼ぶ。


クレメンテ、と。
彼の名はラヴィル・クレメンテ。天地戦争前からの英雄であり、ソーディアンチームでは一番の高齢だった老人だという。
そんな彼は、このドラゴン──海竜にフィリアを迎えに寄越したと語った。神の眼の騒動に気がついていた彼は、フィリアをマスターとして目覚めるつもりだったらしい。




「私は非力です。…でも、皆さんの足手まといになりたくない。」
フィリアは胸の前で両手を組み、ソーディアンのマスターになることを勧めないルーティへ真摯な眼差しを向けた。

「そして、自分の努めを全うしたい……その為にクレメンテ様のお力が欲しいのです。いけませんか…?」
覚悟を決めたその双眸は、まっすぐな光を湛えている。
彼女の気持ちは痛いほど伝わってきた。もう止める理由もないとルーティが肩をすくめる。不安に揺らぐフィリアの瞳に、応援する意味で笑顔を向けた。

健気に頷いたフィリアは明るい笑顔を浮かべて、そしてクレメンテを振り返る。



「クレメンテ様、あなたを受け入れます。どうぞ私に力を!」
フィリアがクレメンテに触れた途端、凄まじい光が周囲を照らし出した。
思わず目を閉じて顔を背けてしまう。





『ひひひっ!』
クレメンテの下品な笑い声を合図に目を開けると、光は収まっていた。見ればフィリアがクレメンテを抱き締め、祈り口づけている。
見たところクレメンテはかなりの女好きらしいし、無理もない。そりゃ下品な笑い声のひとつやふたつ上げるだろう。




「……なんか、エロジジイって言葉がすっごい似合うじいちゃんだなぁ。」
「そうね……売ったらいくらになるのかしら…」
『ルーティ…やめてちょうだい……』
アリアの呟きにまったく関係ない返答をしたルーティ。彼女の姉的存在であるアトワイトは、体があったら頭を抱えてしまうほどの大きな溜め息をついたのだった。



 


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