アウグストの十字架
1.とある吸血鬼の一時間
都市伝説『白翼の十字架と黒翼の十字架』。
それは化学的にも科学的にも解明されていない、伝説だ。
昨今、パーソナルコンピュータというものが普及してから、人間たちは狂ったように電子の世界にのめり込んでいった。
その電子の世界にも、都市伝説がまことしやかに囁かれるようになったのは今から数年前からだ。
その中でも『白翼の十字架と黒翼の十字架』は有名な話だ。
通称『モノクロクロス』。
電子の世界に入る際、ごく稀に一面真っ白な画面に出会うことがあるという。
その画面にはたった一言、
『合言葉をどうぞ』
それだけが記されているという。
しかし電子の世界でも人の口に戸は立てられない。
その合言葉は検索すれば簡単に見つかる。しかし、その合言葉が適用される人間とそうでない人間がいる。
相談事を書き込むと、白翼の十字架のページは消えていく。
ある人は中に入って相談事を書き込んだことがあるというが、その後アクションが帰ってこないとか。
またある人は同じ合言葉を使っているのに、強制的に別のページに飛ばされてしまったとか。
そしてある人は中に入り、相談事を書き込み、さらに返答があったという。しかし次に相談しようとした際、合言葉が適用されずに二度と入れることはなかったという。
白翼の十字架のページに入ることができて、合言葉を入力して相談事を書き込み、それに返答があり、それに書き込みを返すと数日後、黒い手紙が郵便受けに入っているという。
ここからは黒翼の十字架の話になる。
思いを吐き出す白翼の十字架とは違い、黒翼の十字架は想いを叶えてくれると言われている。
黒い手紙は黒翼の十字架のものだ。そしてその手紙に記されている条件をクリアすれば黒翼の十字架に会うことが出来るという。
そうなればなんでも自分の思いを叶えてくれるとか。
一説では白翼の十字架で吐き出した思いを黒翼の十字架が叶えてくれるというものもある。そしてその二つの十字架が同一のものだということも。
真相は十字架と彼らに接したことのある人間にしか分からない。しかし彼らに接した人間はこの出来事を忘れてしまうという。
それ故に都市伝説『白翼の十字架と黒翼の十字架』は謎のままなのである。
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