leprotto

■ 伝う涙


「取り違えるなよ、ボンゴレ。俺はお前を助けに来たのではない。」

そこに現れた人物に、その場にいた全員が目を見開いた。
その男は巨大な武器を地面に置き、ボンゴレを見る。そして静かに言った。
「礼を言いに来た。」





お前ら死んだわ。
和泉が沢田綱吉のもとへ辿り着いた時、ヴァリアーの面々は余裕の笑みを受かべて言い放ったのだ。


XANXUSはリング戦の後、関係者を残さず処分するつもりだったのだと。
そして今、ヴァリアー幹部の次に選び抜かれた精鋭たちがここに向かっていると。


「待ってたぜ。」

到着したヴァリアーの隊員にそう言ったベルフェゴール。口元はいつも以上に笑みを浮かべている。
勝利を確信している人間の表情だ。和泉はそう直感した。


「報告します!我々以外のヴァリアー隊、全滅!!」

日本刀を下げた男が真っ青な顔で衝撃の内容を口にする。
それに唖然としたベルフェゴールとマーモン。
もちろん沢田側もそんなこと寝耳に水だ。味方がこれ以上いるなんて聞いていない。


「奴は強すぎます!鬼神のごとき男がもうすぐここに……」

そこで不自然に言葉を切ったヴァリアーの隊員は背後を振り返って、そして吹き飛んだ。
隊員たちを地面に叩きつけたのは、巨大な鋼球。
そして冒頭に戻る。



「ランチアさん!」
そして、現れたのは黒。
沢田綱吉が彼の名を呼んだ。

「あいつ…あんなつえーんらっけ?」
「強いよ。」
観覧席にいた犬が目を見開く。隣の千種が眼鏡のブリッジを押し上げたのが見えた。


「他人に操られるのではなく、自分の意思で戦うあいつには迷いがないからな。」
「ランチア…さん……」
「ししし、そーきたか。」
「!」
アルコバレーノが言った。和泉もぽつりと声が漏れてしまう。
しかしベルフェゴールが不吉に笑ったのを、和泉は見逃さなかった。見つからないよう袖の針を指の間に忍ばせる。
いつも使用しているものとは形状が違うもので、マチ針のような形の装飾がついたものだ。


「そんじゃ…とっとと済まそっと!」

放たれたナイフ。
同時に和泉も針を投げる。放った針は狙い通り、ベルフェゴールのナイフにある穴を貫通した。
そのまま通過してしまうのでは意味がないが、今投げたのは穴よりも大きい装飾のついたもの。ナイフは針に撃ち落とされ、地面に突き刺さる。
「残念でしたね。」


残りのナイフは、彼が防いでくれるだろう。
和泉が視線を向けた彼は、見事な反応速度で刀を抜いてナイフを叩き落とした。
「おっと、そーはいかねーぜ。」


「和泉さん!山本!!」

沢田綱吉が驚いたようにこちらを向く。それに笑顔を返すと彼も安心したように笑みをこぼした。



「ムム……こうなってくると…」
マーモンが呟くと同時に、彼の浮遊している真下の地中から火柱が立ち昇る。それをまともに喰らって、マーモンは悲鳴を上げた。
それを出したのは、髑髏だった。彼女は三叉槍を握りしめてマーモンを強い瞳で見つめる。
「逃がさない。」


「……ねえ、決着つけようよ。」
「行かせんぞ。」

退却しようとしたベルフェゴールを雲雀恭弥と笹川了平が止めた。沢田綱吉の元へ獄寺隼人が駆け付ける。

「十代目、お怪我は!」
「ありがとう……大丈夫だよ。」


「ダメだこりゃ。」
「ウム、ボス……ここまでのようだ…スノウもいないし…。」
「俺はここにいる。」
「!スノウ!!」

そんな彼らの剣幕に押されたのか、ベルフェゴールはナイフを落として両手を上げた。マーモンも観念したかのように俯く。
しかしそんなマーモンの声に答えたのは紛れもなくスノウだった。
目を見開いたXANXUSはちらりと彼に視線を向ける。マーモンがスノウを見て言った。


「なんとかしてくれないか、スノウ。」
「それは出来ない相談だ…俺の主は、見つかったから。」
「ってことは…やっぱりそうかよ……」
「契約破棄だ、ヴァリアー。」

呟いたベルフェゴールにスノウは淡々と言い放つと和泉の隣にやってくる。
警戒する沢田側の人間に、彼は両手をひらひらと振って何も隠していないことを明らかにした。
「俺は彼女に何かするつもりも、貴殿らに何かするつもりもない。」


「……役立たずのカス共が…くそっ…ちくしょう!」

スノウも自身の陣営から離れたことを知り、XANXUSは悪態をつくと勢いよく吐血する。
スクアーロと跳ね馬が何やら話し込んでいるが、和泉には聞こえなかった。

「主……今回の戦い、力になれずに申し訳ない。」
「そんなこと…いいです。気にしないで、スノウさん。」

そう、申し訳なさそうに眉を下げたスノウに和泉は首を振る。
チェルベッロがXANXUSの指輪を回収し、顔を上げた。



「お疲れさまでした。それではリング争奪戦を終了し、全ての結果を発表します。」
「XANXUS様の失格により大空戦の勝者は沢田綱吉氏。」

それを聞いて沢田側の全ての人間が、息をついて小さな微笑みを浮かべる。
もちろん、和泉もだ。





「よってボンゴレの次期後継者となるのは、沢田綱吉氏とその守護者七名です。」








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