leprotto

■ 閉じる瞼

「待って!俺、君と戦うつもりなんてないんだ!!」
「貴方にはなくとも、私にはあります。……貴方はボンゴレ十代目、なのだから。」
「十代目、下がっていてください!この女、俺が果たします!!」
針の切っ先をボンゴレに向け、睨みつけた。同時に銀髪の男がダイナマイトを構える。


「貴方……スモーキン・ボムですか。…千種を倒したのは貴方ですね……。」
先程からのこの殺気、ボンゴレとは比べ物にならない。加えて武器はダイナマイト。千種の傷も裂傷ではなく、火傷だった。
なら、目の前のこの銀髪の男が千種にあんな怪我を負わせたということは簡単に想像出来る。



「だったらなんだってんだよ。」
「おい獄寺……」
なおも睨み付ける銀髪の男に黒髪の男が制止をかけるが、銀髪の男はダイナマイトの数を増やした。
目を閉じて、彼の言葉を聞く。


「この女は危険だ。纏う空気が半端ねえ!!」
「確かに感じる空気はピリピリ来るけどよ、そんなにトゲトゲしなくてもいいじゃねぇーか。」
「うるせぇ、野球馬鹿!!」
「やめてよ獄寺君!無理にかかって行っても負けちゃうよ!!」
一喝したボンゴレは、こちらに向き直って不安そうに拳を握った。
不安そうな半面、強い光を宿したボンゴレの目を直視出来ない。

「ひ、ヒバリさんが…あの最強のヒバリさんが負けたかもしれない相手なんだよ……!」
「ひばり……?」
「風紀委員の人なんですけど…」
「風紀委員……ああ、」
ボンゴレが眉を下げた。単語から思い当った和泉に、彼は希望の色を浮かべる。


「……彼なら、無事です。」
「え……?」
「それが知りたかったのでしょう?そろそろお話は終わりにしていただけますか。」
挑発するように針を向ける。
ボンゴレを庇うように前に出た銀髪の男はすぐにダイナマイトに点火し、和泉にも見切れる程度の動きで放った。



「果てろ!」
「……参ります。」
それが起爆したのと同時に和泉は駆け出して銀髪――獄寺隼人の懐に入る。
彼が、ぎょっと目を見開いた。

「なっ!!一瞬にしてここまで!?」
「獄寺!」
「く……っ!」
真正面から打ち込まれたバットを受け止める。しかし、そのバットは瞬時に形を変え、和泉の腕を抉った。
出血する腕を押さえ、飛び退く。


「変形式の刀、ですか……!」
「ははっ、流石にびっくりしたみてーだな。」
「ええ。正直、驚きましたが……」
そこで、黒髪――山本武を睨み据えた。朗らかに笑っていた彼も、動きを止める。
和泉は目を閉じて、眉を寄せた。首から下げていた十字架を握りしめて、考えるのは神へ送る祈りの言葉ではない。


君主への、そう……許しを乞うような。和泉の心中はそんな心境だった。


(骸、様……。)

ゆっくりと目を開けて、目の前の男へ殺気を放つ。和泉は負けるわけにはいかないのだ。
もし、骸が彼らに倒されてしまったら和泉どころか犬や千種も居場所を失ってしまう。そのために自分たちのしたことが正当化されるわけでもないけれど、和泉はそのことが怖くてたまらなかった。


「それでも貴方は私に勝てない。……千種や犬に、勝てたとしても。」

だから、骸の役に立つのだ。
そう自分に言い聞かせて和泉は針を男に向けた。

それは威嚇のためであり、本心を隠すための虚勢。和泉に出来る、精一杯の見栄だ。
 

 


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