leprotto

■ 震える睫毛


「和泉、」
「ん……」
「和泉、起きて…。」

「ん…?………え、あ、わぁっ!?」
「和泉!?どうしたびょん!!……あーっ!」

少女の声で目が覚めた和泉は、いきなりのドアップに悲鳴を上げた。
和泉の声に驚いたのか、部屋に犬が乱入してくる。

「てめー!和泉の上から離れろっ!!」
「和泉、起きない……ご飯、食べれなくなっちゃう…。」
「てめーが心配しなくても和泉の分は柿ピーが取っとくっての!」
「……死んじゃう…。」
「和泉は死なねーっての、このバカ!!」

毎朝、犬と髑髏の掛け合い(?)で起こされるのに慣れてしまった。瞬きを繰り返して頭を覚醒させる。

先日、髑髏がここに来てからというもの、彼女は毎朝和泉の元へ来ては和泉を起こそうとしてくれている。
いい加減和泉が慣れれば万事解決なのだろうが、起きて早々目の前に少女の顔があれば驚くだろう。
そこに心配した犬が駆けつけて、髑髏との掛け合いに発展してしまうのだ。


「犬、そんなに言わなくても大丈夫ですよ。」
「和泉……だって。」
「髑髏は私を起こしてくれただけでしょうから。……ね?」
「……うん…わかったびょん…。ってわぁぁぁああああ!!」

うなだれて落ち込んだ犬を撫でてから和泉は制服を取り出す。上着を脱いだのを見て犬が慌てて出て行った。
それに苦笑しつつ、和泉はワイシャツを着始める。

「……。」
「髑髏?どうかしましたか?」
「ううん……なんでもない…。」
服を着終わると、髑髏がじっと和泉を見つめていた。
その目には熱が灯っており、心なしか頬も桃色に染まっている。声をかけると彼女はふるふると首を振り、和泉の手を握った。


「行こ、和泉…。」
「そうですね。」

下にいるのであろう千種と犬を浮かべながら、髑髏の手を握り返す。
彼女の手は犬と違って、ひんやりしていて小さかった。
 

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