leprotto

■ 靡く髪


並盛中学校。大きくその名を主張している校門。
その校門の前に一人、周囲の者とは違う制服を身に付けた少女が立っていた。
若草色の上着の下にブラウスを着込んでいる。それはまるで自身を覆い隠す蓑のようであった。

「……っ、」
少女が小さく何かに反応する。その視線の先にはグラウンドにぽつりと佇む一室があった。
早朝練習でランニングをしている生徒たちが少女の横を擦り抜けていく。


「……あった…」
小さく呟いた声は、誰にも聞こえることなく肌寒い空気の中に溶けていった。
風が少女の髪をさらっていく。

「……」
しばしの無言を貫いた少女は、そのまま躊躇いなく敷地内に立ち入ろうと踏み出した。
若草色の制服に良く似合うこげ茶色のローファーが小さく音を立てる。


「待て!」
しかし、その少女の足を止める者がいた。
少女が振り返る。そこにいたのは、周囲の学生とは違う学生服を着た集団だった。

「貴様黒曜中の者だな!一体我が並盛中に何の用だ!!」
「……友人に、会いに。」
「友人だと?なら誰に会いに来たのか教えてもらおうか!!」
「こっちに来い!!」
どこかの国で有名なパンを模したような髪型の集団は、かなり凶暴そうで目付きも悪い。僅かながら少女の眉がひそめられた。桃色の唇から出た声は警戒心に溢れている。
だがその警戒心が災いしたのか、集団の中で最も前にいた男が少女の手を掴む。

もうすぐ始業のためか少なくなってきていた周囲の生徒が、ぎょっとした様子を見せた。


「…わかりました。」
しかしそんな周囲の目など気にも留めずに、少女はされるがままに人気のない場所へと連行されたのだった。



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