一年前 「みんな初々しい顔してるねぇ…」 屋上庭園から見下ろす名前はそうポツリとこぼした。塀に肘をつき、楽しそうに新入生を見ている彼女に俺は笑ながら答えた。 「名前も去年は同じだったんだよ」 「そうなんだけどさ、たぶん私あんな顔してなかったよ」 俺の方に向き直して、錫也去年初めて会った時のこと覚えてるでしょ?と聞いてくる彼女に、一年前のことを思い出していた。 月子と逸れて探している時の事。桜散る中すやすやと木の下で眠る彼女を見つけた時はとても驚いた。男子校と言っていいほどに女子がいないはずなのに、警戒心もなく寝てるのだから。 彼女を見てわかったことは同じ新入生だということ、そして綺麗な顔立ちをしてること。 入学早々こんなことをしていて大丈夫なのかと心配になってしまう。女の子としての自覚が足りないと言えばいいのか…。 「……」 どうしようかと考えているところで、そろそろ入学式が始まるとアナウンスが聞こえてくる。このまま放置する訳にもいかないから彼女を起こすことにした。 「君、もう少しで入学式が始まるよ」 「…まってお母さん…あと1時間」 もぞもぞと動くが、起きる気配はなく そのまままたスヤスヤと寝始める。心の中で一時間もかよとツッコミしてしまったのは置いといて、もう一度声をかけた。 「俺は君のお母さんじゃないよ。君、一年生だろ?」 「…あ…お母さんじゃない…?」 「…、…」 やっと起きた彼女が目を開いた時、俺は息を飲んだ。前述した通り彼女は美人だったのだが、それ以上に目が綺麗だったのだ。今までに見たことのない金色。夕焼けの空のような澄んだ目に俺が映っていた。 「えーっと…起こしてくれてありがとね」 そうはにかむ彼女にああ、としか言えず思わず視線を逸らした。彼女は立ち上がって服についた草をはらい、袖をまくって腕時計を見た。 「やば、もう入学式始まる…。あ、私は名字名前。」 「俺は東月錫也。天文科だけど君は?」 彼女は驚いた顔をして、私もよと笑った。 今まで月子一筋と自分で断言できるほど他の女の子なんかに興味はなかったのに、彼女の目に俺が映っていることに酷く高揚感を覚えた。彼女を独り占めしてるみたいだ。 「東月くんとは縁があるみたいだし、これからよろしくね」 「錫也でいいよ。こちらこそ、こらからよろしく」 出会った時のことを思い出しふふ、と笑った。そうすると名前はそんな変なことしたかな、と考え始めた。 名前がしたことが面白かった訳ではなく、あの時の自分の独占欲の酷さに笑ったのだがそれは秘密にしておく。 「なんでもないよ、名前は可愛いなって思っただけ」 「また、そういうこと言うんだから…」 そう言って顔を真っ赤にする彼女の唇にキスをした。 一年前の今日、君に恋した 久々に書いたらキャラがよくわらなくなってしまったけれど許して… Title by 確かに恋だった 201600807 |