※鯉若/鯉伴存命時。
「鯉伴さん、鯉伴さん」
「ん、どうした? あんま動くと腹の子にもおめぇさんの体にも響くだろ」
「この位大丈夫です。それより、このお家はお雛様を出したりしないんですか?」
「お雛様? ……嗚呼、桃の節句が近いからか。どうしてそんな事聞くんだい? 若菜は嫁に来たんだからもういらねェだろ」
「いえ、私のじゃなくて……雪女ちゃん達のお雛様です。女性の妖怪だって多いんですからてっきり出すのかと思ってたんだけど」
「あー此処じゃあ一切そういったのは出さねえよ。若く見えるからと言っても、本来はもっと年食った奴ばっかだからな」
「そうかもしれないけれど……やっぱりお雛様って女の子の憧れだから出してあげなくちゃ」
「……分かった。若菜がそこまで言うなら仕方あるめぇ。明日、下の奴等に言って用意させるからよ」
「あ、有難う、鯉伴さん」
「そう言えば、雛人形は桃の節句が過ぎる前に片付けねえと嫁に行けないって言うな」
「そうですね」
「じゃあ、産まれてくる子が女の子だったら俺ァ片付けねえぞ。出しっぱなしにしてやる」
「え?」
「可愛い可愛い娘を嫁に出すもんか」
「も、もうっ、鯉伴さんってば。未だ女の子か男の子かも分からないのに」
「そうだが、此れだけは譲らねェ」
「はいはい」
(産まれてくる子が女の子だったら色々大変そうね)
桃の節句。3月拍手御礼。
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