▽3Z。ビッチ高杉くん。



 彼の首筋に紅い痕がある事に気付いたのは何時だったか。随分前の事だったかのようにも思えるし、最近の事のようにも思える。そう、確か、何時もサボってばかりいる彼が珍しく朝のHRから帰りのHRまで出た日の事だ。余りにも意外な事だったので(実際、俺以外の教師陣もざわめいていた)帰り際にじっと彼を見ていて、それで首の紅い痕に気づいた。鬱血して紅くなった一ヶ所。あれは喧嘩なんかじゃ出来やしない。誰かと、そういう事を、しないと。 若いからなあ、とその日は見てみぬふりをした。するとどうだろう、次の日も高杉は朝から授業に出たのだ。首に、紅い紅い痕を増やしたまま。今日もか、とまた見てみぬふり。次の日も、また次の日も……。高杉の首筋にどんどん増えていく紅い花。そしてそれを見つけるが、見ていないかの如く振り撒く俺。

 しかし、その日々は長く続かなかった。

 ある日、俺は高杉と二人きりで話す時間が出来た。首にあるモノを隠しもせず暢気に学校へ来る高杉に、俺が堪えれなかったのだ。

「高杉」
「なあに? せんせ」
「別に叱ろうとかそんなんじゃねえけどさ。流石に学校では隠しておこうよ」
「……何を?」

 わざとなのか、それとも本当に分かっていないのか。高杉はきょとりとして首を傾げる。それだよ、それ、と俺の首をちょいちょいと指差す。丁度、高杉のところにあるそれと、同じ場所を。

「ああ、これ、ね」

 漸く高杉は気付いてくれたようで掌でそこにそっと触れる。紅い痕が、白い肌に埋もれて見えない。
 にんまりと、高杉が綺麗な顔を楽しそうに歪ませた。此れは、何か悪戯を企んでいる子供がするような笑みだ。ぞくり、と嫌な予感が背後を過った。

「せんせーも付けてみる?」

 天国見せてやるよ。そう笑った彼に俺は、ああああ、俺は。


くれるの? 有難う


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