▽銀高(幼少→江戸)



「たかすぎー早く早く!」
「てめっ、この天パ! 歩くの速ぇんだよ。ちったあ俺に合わせれねーのか」
「ええー、面倒。仕方ないなあ」
「っ、手ぇ握んじゃねえ」
「れっつごー」
「無視かよ!」

 交わされる言葉。かちり、と合う視線。触れる肌。握り締めた互いの手。幼かった二人の、温かな記憶。もう戻ることの出来ない幸せだった日々。


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 その日は雨が降っていた。雨脚は強く、風も乱暴に吹き荒れている。それ故にか、何時もならば人や天人で溢れかえっている街道には数人の人影しか無い。こんな天気の中、外出する奴なんて余程物好きか外せない用事があるかのどちらかだろう。銀時はと言うと、前者だった。なんとなく、只なんとなく外を歩きたかったのだ。目的も何もなく、傘を差してぶらぶらと歩く。いい加減帰らなければ、家で待っている子供二人が煩い。くるりと体を回転させ、今きた道を戻ろうと足を踏み出したその刹那、ぴりりと肌を刺す視線を感じた。
 睨み付けると言うよりも、憎しみや殺意が籠った視線。此れには覚えがある。つい先日、祭で感じた視線。

(嗚呼、あいつか)

 体を動かさず目だけを動かして辺りを見渡す。それらしき姿は見られない。と言う事は何処かの路地裏か、はたまた宿屋の二階辺りからこちらを見ているのか。未だ手を出してこないところを見ると、今日は何もしてこないのだろう。ならば、此処からさっさと去ってしまいたい。突き刺すような殺意が籠った視線を受けながらも銀時はゆっくりと足を踏み出す。何も無かったかのように今までと同じ足踏みで。



『高杉!』
『あん?』
『ずっと一緒に居ような』
『嫌だ』
『えっ』
『…………お前がこの手を離さなかったら考えてやっても良い』
『分かった! ぜってえ離さないから』

 握った手を離してしまった今、もうあの頃に戻る事は叶わないのか。


すれ違い、殺意


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