▽3Z。
動物が飼いたい、と高杉が言ったのは何時だったか。詳しくは覚えて無いが夕暮れ時。此の部屋が真っ赤に染まっている時間帯であった。
「へ?」
「だから、どーぶつ」
「何で?」
「……動物飼いたいから」
驚いた。人にも生き物にも興味を示さない高杉が、動物を飼いたい、と言ったのだ。もしかすると、生き物に興味を持つようになったのかもしれない。此れは良い傾向だ。高杉にとっても、俺にとっても。
そして、今に至る。玄関に置かれた金魚鉢。なみなみと注がれた水の中を二匹の金魚が游いでいる。赤と、黒。まるでおめぇと俺みたいだ、と高杉は言う。赤が銀八で、黒は俺、と。この二匹を連れ帰ってきた日から高杉は甲斐甲斐しく世話をしている。こんなに甲斐甲斐しく世話をする高杉を見たのは初めてだ。何時もは俺の部屋でぐうたらしているのに。
「何でそんなに世話すんの? ってかいきなり動物飼うとか言ったのは何で?」
金魚に餌を与えようとしていた高杉がくるり、とこちらを向いた。握りしめている手には茶色い餌が入ってるのだろう。
「滑稽だろ」
「滑稽?」
そう、と頷く。
「銀八に飼われている俺が、他の物を飼う」
ペットがペットを飼うなんて可笑しくて腹が捩れそうだ、と言う高杉の手から茶色の粒が、餌が、零れ落ちた。
水槽
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