if......




※昼若独白。短い。リクオ+鴆。




 ねえ、鴆君。これからボクが話す事は“もしも……”の話だからね。“未来”なんかの話じゃ無いって事を最初に理解して。“もしも”だとしても、とても悲しい話をするんだ。鴆君は辛そうな顔をするのかな。きっと君ならしそうだ。でも、そんな顔しないで聞いて。この話の通りになるか、ならないかは未だ分からないんだから。
 それじゃあ、少しばかり耳を貸してね。

 もし、ボクが鴆君より先に逝く事になってしまっても、どうか泣いたりしないで欲しい。どうか、生きようとする思いを失わないで。確かに君よりボクが先に逝くという可能性は限りなくゼロに近いんだろう。でも、ボクは人間なんだ。……え?夜は妖怪になるだろう、って? 夜のボクと昼のボクは別人だよ。“ボク”は人間。故に他の人間と同じ位しか生きれないし、妖怪と違って弱く、儚い。命に携わる鴆君なら分かるでしょう。しかも、ボクは、奴良組の若頭だ。いつ何時(なんどき)抗争によって命を落とすか分からないぎりぎりの状況の中で生きている。
 ……もし、命の灯火が消える時が鴆君より早く訪れてしまったとしても、君には泣いて欲しくないんだ。大好きな君には生きていて欲しい。何時ものように毅然とした態度で居て欲しいとボクは願うよ。君の体が自身の毒に侵されているとしても、最期まで生き抜いて。我侭だって事は十分承知しているさ。鴆君がこんな話をするボクを怒る事も分かっている。それでも、どうかボクの我侭を聞いてくれないかな。

 嗚呼、もう、そんな顔しないでってば。“もしも”の話なんだよ。ボクだって大事な大事な義兄弟を遺して先に地獄になんか逝けないしね。……妖怪が天国なんて言葉を言うの? おっかしくて腹が捻じ曲がりそうだ。
 ……“もしも”を考えてしまったからなんとなく、話をしたくなっただけだよ。大丈夫、大丈夫だから。ボクは君を独りにする気なんて更々無いんだ。

 でも、“もしも”が“現実”となってしまったら、その時はボクの我侭を聞いてね。許さなくても良いんだ。約束を破る事になるから。謝るのは……鴆君とあの世で再会した時で良いよね? ボクが死んだら、君が好きだと言った自然の中で君を見守りながらずっと待っている。だから……だから、どうか――。

 
 そんな事を鴆君にお願いしたら、彼は悲しそうな表情を浮かべて呟いた。

「きっと俺はお前を想って泣くだろう」

 だから、リクオの我侭は聞けない。
 ごめんな。







もしも、のお話。



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