※「キミトスベテ」mako様より相互記念。
真昼の月はうっすらとその存在を主張する。青に浮かぶちょっとぼやけて見えるそれはいるのだけど空が明るすぎて輪郭がはっきりしない。だけどそこにいる。夜になれば己をしっかりと持っていて昼間には見たこともない光を煌々と放つのだ。
まるで自分達のようだ。昼のリクオはそっと呼気を逃がす。交わることはないくせに互いを必要としている太陽と月。
桜吹雪の中でぽっかりと浮かんだ月を見てそう思わざるを得ない。夜のリクオに会いたくて自室から抜け出た昼のリクオは額に手を翳(かざ)して苦く笑みを溢した。
「昼」
やっぱり、と自室へ戻ろうとした昼を朗々とした夜の声が引き留めた。ひくり、と肩が震えた事には気づかれていないだろうか。昼は唐突に怖くなった。本来なら交わることが自然に反する事なのに夜に会いたくて、会いたくて堪らないのがばれていやしないかと。
「昼」
なのにまた呼ぶ声。見てしまったら、聞いてしまったら、本来の関係が崩れそうで怖くて振り向けない。だけど動けもしない。ぴしりと背を向けたまま固まっていたら今度はぐっと腕を引っ張られて昼は体制を崩す。それをすかさず抱き込めると夜は満足気に笑った。
「よる？」
「――……ちょっと、こうさせろ」
抱き締める力が強まるけれど昼は嫌な気持ちがしなかった。自分より低めの体温が触れることに酷く安心を覚えるのだ。腕を夜の背中に回して羽織をぎゅうと握りしめる。耳許で夜が息を詰めたがそれも一瞬、口許を歪めると昼の耳たぶにキスを落とした。
「う、あ、」
ひくん、と敏感に反応して着物を掴む掌に力を込めると夜はちゅと、音をたててまたキスを落とす。
「まだ、だ」
離れようとする昼の背中をなぜて動きを封じ込めた。掠れた声音で囁かれて昼のリクオ全身は夜を感じた。
「お前が、足りない」
ああ、求めているものは同じなんだ。夜の瞳の奥に宿る熱を感じながら昼はそっと夜の唇に口づけて瞼を閉じた。
――真昼に見える月――
いつまでもいてくれるのだと約束みたいだった。
「キミトスベテ」mako様より相互記念小説を戴きました！砂糖を吐いてしまう位甘いお話を……という無茶振りにも快く答えてくださってこんなすばらしいお話を!!本当にありがとうございます。
甘えん坊な夜が大好きです。というか、もっと昼を求めちゃっても良いじゃない！と毎回思うのですが私だけですかね。
素敵なお話本当に感謝、感謝！今後もどうぞよろしくお願い致します。
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