守る、という決意




※短い。昼→鴆っぽい。




 鴆〔ちん,ぜん(中国語読み)〕
   大きさは鷲ぐらいあり、美しい緑色の羽毛、銅に似た色のくちばしを持つ。その羽は猛毒であり、羽根を浸した酒は古来よりしばしば暗殺に用いられた。(出典『第五版 広辞苑』岩波書店)


 鴆は弱く短命な妖怪なのです、とあの日、烏天狗は言った。猛毒をその身の内に宿す彼らは儚い。それもそうだろう。たった一枚の羽根を酒に浸すだけで、人一人を殺してしまう程の猛毒だ。それを己が日々纏っているという事は単なる自殺行為でしかない。それならば、猛毒の羽なんか捨ててしまえば良いのに、とリクオは思った事がある。しかし猛毒の羽を持つ事こそが鴆という妖怪の畏なのだ。それを奪ってしまえば、鴆は鴆ではなくなってしまう。ただの鳥か……はたまた異形か。少なくとも、リクオの傍に在り続ける事は出来なくなるだろう。

「だから、弱い彼をボクが守らなくちゃ」

 守ると決めたのは随分前の事だ。鴆は、お前に守ってもらう程弱くはねえよ、と笑ってリクオの頭を撫でていたが、それは強がりにしか見えなかった。幼い頃からリクオの世話を焼き、今は五分五分の盃を交わした為正式な義兄弟になった彼には、きっと“兄”としてのプライドがあるのだろう。何度、リクオの目の前で血を吐こうが、倒れようが、一度も弱音を吐いたりしなかった。寧ろ、リクオを心配させまいと、もう大丈夫だ、と言ってすぐに体を動かしたりしていたのだ。その気遣いは嬉しいと思う。しかし、彼は義兄弟でもあるが、リクオの率いる百鬼の一員でもあるのだ。百鬼を従える事も大事だが、その百鬼を守る事も魑魅魍魎の主として、とても大事な役目だとリクオは幼い頃から教わってきた。故に守りたいのだ。あの儚い毒鳥を。十二歳というまだ幼く、夜の自分に頼らなければならない弱い人間の自分だが、この思いと決意を忘れなければきっと守れるだろう。その為に強くなれるだろう。……否、強くならなければならない。

「今は、夜のボクに任せるしか方法はないけれど」

 いつか、愛しいボクの鳥をボク自身が守ってみせる。必ず。







幼い子の固い決意。若誕お祝いに添えて。



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