秘めた想い




※夜→昼




 此処はボクと夜だけの秘密の場所だよ、とあいつは微笑みながら言った。俺とあいつがほんの僅かな時間だけ会える夢か現かはっきりしないこの場所を“二人だけの秘密”だと。それがどれ程嬉しかったのかはきっとあいつには分かるまい。あいつの言葉が俺の心を一喜一憂させる。あいつの行動が俺の心を動かす。それだけあいつの存在が俺の中で大きいのだ。夜には百鬼が居るじゃない、とあいつは言うが、俺は百鬼に其れ程まで執着していない。それに俺が思う事全てをあいつらは理解したり、感じ取ったりしてはいないだろう。けれど、昼は違うのだ。昼は俺の思う事、考える事を口に出さずとも分かってくれる。――一番の理解者なのだ。そんなの当たり前じゃない。ボクと君は一緒なんだから……とお前は何時もの笑顔を浮かべて言うんだろうな。確かに同じ存在だから分かるのかもしれない。同じ身体を共有し、同じ精神世界に存在する者同士だから。しかし、俺はそれだけじゃないと思う。お前が俺の全てを見てくれているから分かるんじゃないのか、と。昼にとって俺は守らなくちゃいけない、追い越さなきゃいけない存在なのだろう。若しくは家族のような……兄弟のような存在だと考えているんだろうな。今はそれで良い。今のままで居てくれて構わない。俺も“そんな存在”として振る舞うから。ただ、何時か、その気持ちが別のものに変わって、俺の存在をもっと違う存在として見てくれよ。……そう、俺がお前に抱いているような、身が焦がれるような想いを抱いておくれ。それまでは俺の気持ちになんか気付かなくて良い。いや、気付いて欲しくなんかねえんだ。気付いてしまったらお前は悩むだろう。俺に対してどう接すれば良いのか分からなくなって、仕舞いにゃ慌てふためく様が手に取るように見える。そうなってしまっては今の穏やかな時間が失われてしまう。俺はお前の心も身体も欲しいが、逢瀬の時間もこのまま手に入れていてえんだ。欲張りだと笑ってくれても構わない。それだけ俺の中ではお前も逢瀬の時間も大切でかけがえのねえものなんだ。だから、今はこの気持ちは胸の奥深くに隠してしまって、普段と変わらねえ表情でお前を此処で出迎えよう。“二人だけの秘密”だと言った此の世界で。
 何時か、そう遠くない未来で俺はお前を手に入れる。……それ位願ったって良いだろう。何年もお前の中で待ったんだから。

「――昼」

 恋しい、愛しい彼の者の名前を呟く。学校とやらに専念している此の時間、お前にゃ届かないだろう。それでも俺は何十回、何百回と昼の名を呼ぶ。此の場に居ないあいつの事を。こうやって呼び続けて、何時かお前に届くと良い。

 ――愛している、と。







片想い。若誕お祝いに添えて。



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