▽八→高/監禁



「なあ、銀八。これで満足か」
「んー、満足してないって言ったらもっと酷いことして良いの?」

 じゃらり、と俺の手から滑り落ちていく冷たい鎖が高杉の顔を写し込む。その自信に溢れる表情は強がっている証拠。本当は不安と恐怖と悲しさでいっぱいのくせに、俺にその表情を見せまいとしているのだ。泣き喚いて助けを乞えば良いのに。嗚呼、そうだね。高杉はプライドだけはてっぺんさんだから、格好悪い姿なんて俺にも、他人にも見せたくないんだね。

「俺を監禁して、更に鎖で縛り上げているくせにまだ満足してねぇのか?」
「足りない、全くと言っていいくらい足りないよ、高杉。だってお前は……俺を見ちゃいないだろ」

 心の奥底で爆発しそうな感情を押し殺し、ぐっと手に持っていた鎖を上に引っ張ってやる。その先に繋がる首輪がきしりと鳴いた。首輪が絞まったせいで高杉の首も圧迫されたのだろう。苦しそうに顔を歪め、綺麗な唇からは息が詰まる音が漏れた。その顔、たまらない!

(この感情は俺だけのものなんだろうか)

 じっと高杉を見る。うっすらと首筋に締め上げた痕が浮かび、緊張しているのか汗も顔を伝っている。それでも泣いたり叫んだりはしないのだからその根性に拍手を送りたくなる。助けを乞わなければ二度と此処から出られないかもしれないというのに。

「ねぇ、高杉。愛しているよ。高杉も俺を愛してくれる?」
「誰が、手前なんざ」
「……はいはい、俺なんかだろうけどさ」

 鎖を持つ手に自然と力が入る。思いっきり引いて高杉を俺の方に引き寄せた。すっぽりと腕の中に収まる小さな体。抵抗されるか不安だったのだが、その気配を微塵も感じさせない高杉に驚いた。

「抵抗、しないの?」
「あァ? 抵抗してほしいのか?」

 鋭い目付きで睨まれる。しかし高杉は俺の腕の中で、俺を見上げるような形になってしまっているから怖くは無い。寧ろ、可愛らしい。
 あまりにも可愛い姿を見せる高杉が悪いんだよ、と勝手に俺の中で理由付けて、鎖で繋がった首輪を手繰り寄せる。そうしてそのまま、深く息継ぎすらも許さない口付けをした。





愛してください、この檻の中で。



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