▽八高/暴力



 握った拳を頭上より高く振り上げてそのまま高杉の綺麗な顔目掛けて勢いよく振り落とした。がつん、と鈍い音がして彼は冷たいフローリングに倒れ込む。俺がその上に馬乗りになるように乗って全体重をかけてやれば苦しそうな声が高杉から漏れた。
 がつんがつんがつんがつんがつん。何度も何度も綺麗な顔に拳をめり込ませる。彼の片目を隠していた眼帯が外れてしまったけれどそんなの気にしない。
 がつんがつんがつんがつんがつんがつんがつんがつん。あ、鼻血が出ちゃった。フローリングの床に赤い点が飛ぶ。やめてほしいなあ、最近ワックスをかけなおしたばっかりなのに。何だかそれに苛ついてもう一度殴ってやった。血がついちゃうからがりがりに痩せて肋骨が浮かんでいる腹に一発。そうしたら高杉はぐえっ、て鳴いた。まるで蛙が潰れたような聲。あはは、汚いなあ。

「……めて、……ぱち」

 何か鳴いてるけど聞こえない。ねえ、高杉。俺は教えたよね? 何か意見があるなら大きな声ではっきり言いなさいって。

「そんな小さな声じゃあ、何も聞こえないよ」

 聞こえたとしても多分、聞こえないふりをするんだろうけど。なんて可哀想な高杉! 俺なんかを信じちゃうからこんな事になっちゃうんだ。男は皆、ケダモノだからね。

「やめて、やめて、やめて」

 片方の目から涙を溢しながら高杉が俺に懇願してくる。あーあ、鼻血やら涙やらで折角綺麗な顔がぐちゃぐちゃになっちゃってるよ。まあ、俺が殴りすぎて綺麗じゃなくなってるんだけど。

「何? 高杉何を言ってるの」
「やめろよ、銀八ィ」
「やめるって、コレを? 俺からお前への愛なのに!」

 もう一発腹へ。
 これは暴力なんかじゃない。高杉への愛なんだ。俺から溢れ出る高杉への愛が形を持ったもの。だから、ねえ、高杉、受け取ってよ。
 顔に三発。

「やめて、やめて、やめて、やめ……」

 がつんがつんがつんがつんがつんがつん。
 嗚呼、どうしてこうなった。





やめてと泣く泣くきみはいう



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