▽銀高/原作
幼い頃触れた彼の手は柔らかく、暖かかった。それから幾年が過ぎて触れた彼の手は男らしく骨ばっていて、あちこちに出来た擦り傷がとても痛そうに見えたが、幼い頃と変わらず暖かかった。
そして、現在。
彼のあの手はどうなってしまったのか気になるのだが、多分、いや、これから先彼の手を触れる機会等無いのだろう。紅桜の一件で俺はあいつに「ぶった斬る」と宣言しちまったし。敵になってしまった以上、あいつを見かけたら斬りに行かなきゃいけない。何であんな事言っちまったのか……。あの時の俺の胸ぐらを掴んで問い詰めたい。きっと「勢いで、つい」なあんて返事が返ってくるんだろう。勢いって本当に怖い。
「あー」
高杉。
俺は今すぐにでもお前に触れたいよ。昔、繋いでいたみたいに高杉の手を取って、指と指を絡めて歩きたい。そうして、少し照れ臭そうにそっぽを向くお前を見ながら俺は笑って、そんな幸せをもう一度この手で感じたい。
「なあ、高杉」
今現在のお前の手はどうなっているんだろうな。色々と変わってしまったけれど、手の温もりだけは変わらずで在って欲しい。どうか、どうか少しでも俺の高杉の欠片が残っていますように。
確かめる術は何処にも無いけれども。
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