▽金高/ホストと社会人。
午前二時。
一人で寝るには広すぎるキングサイズのベッドの上でごろりと寝返りを打つ。寝返りを打っても落ちる事がないこのベッドで一人、朝を迎えるのは何度目だろうか。こういう生活を始めたのは半年程前だ。金時と出会ったのもその頃で。まさかこんな生活が待っているなんて思いもしていなかった。
(眠れねぇ)
今日も仕事だと言うのに全く眠気が訪れない。眠ろう、眠ろうと考えるのだが、逆効果のようで更に目が冴えてくる。
俺にとってこのベッドは広すぎるのだ。二人で眠るのには丁度良いだろう。しかし、今此処にいるのは俺だけだ。冷たいシーツがひやりと肌に触れる。寂しい、なんて女みたいな事は言わない。だけど、だけど。
「会いたいよ、金時」
ホストと社会人では生活時間が違う。故に会う時間も限られてくるのだ。この広いベッドに二人で寝る事も月に何度かあれば良い方だ。こんな思いをするのだったら、シングルベッドを用意してもらえば良かった、なんて思うがきっとそれを金時は許さない。このベッドで寝て欲しいんだ、と何度も懇願された。あんなに必死に頼まれたら断れない。 別に毎日一緒に寝て欲しいとは言わない。週一で良いから側で寝て欲しい、そう言えば優しい金時は無茶してでも俺の願いを叶えてくれるだろう。だが、金時の仕事の邪魔はしたくないから絶対に口にしない。
ごろりと何度目か分からない寝返りを打つ。隣には、誰も居ない。
「眠れねえなあ」
強制的に目を閉じる。金色の頭をした恋人が帰ってくるまで、後。
眠れない午前二時。
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