▽現代。



 さらりと紫がかった髪を撫でる。俺のくるくるとした髪とは違い、癖の無い高杉の髪は指から零れ落ちた。まるで逃げているかのようだ。俺から。何だか悲しくなって俺の胸元に身体を預けて眠りについている高杉をぎゅっと抱き締めた。何時の間にこいつはこんなに痩せたのだろうか。筋肉は未だある。けれど、不安になる位細いのだ。ごつごつとした骨が当たる。更に抱き締める腕に力を入れると苦しかったのか、ん、と眉間に皺を寄せて閉じていた瞼がゆっくり持ち上げられた。

「ぎんとき、痛ぇ」

 そんな事知るか。俺はお前が消えるんじゃないかって不安で不安で堪らないのに。消えないようにこうやって抱き締めているのに、何なんだ。更に力を込める。ぎゅうぎゅう、ぎゅうぎゅう。

「痛いって言ってんだろ」

 離せ、と耳元で騒がれるが離す気なんて更々無い。だって、だってこの手を離したらすり抜けて行ってしまうんだろう。何処か、俺の知らない遠くへ。だから喚いたって、暴れたって離してあげない。お前は俺の側に居れば良いの。テロリストなんてやめちまえば良いのに。壊した後どうする気だよ。
 嗚呼、そう言えば、聞いた事が無かった。壊した後の事。世界を更地に変えるとか何とか言ってたような気がするけれど、その後はどうするんだろう。先生の居ないこの世界を壊して、目的を果たしたその後、高杉はどうするんだろうか。聞いて、みたい。

「高杉」
「あ?」

 高杉が苦しそうな顔で此方を見てくる。そう言えば抱き締めたままだった。ごめんね、と謝りながらほんの少しだけ力を抜いてあげる。逃げない程度にほんの少し。

「……世界を壊したら、お前はどうするの?」

 ああ、ああ、聞いてしまった。嫌な予感がする。答えは聞いちゃいけないような、そんな気がするのに。

「決まってんだろ。先生の処に逝くんだ」

 そう言って、高杉は嬉しそうに笑みを浮かべた。


その命を持って世界を停止させていただきます。


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