―――屋上の柵を見てみていると、ここを通り越したらどうなるのだろう、
なんて馬鹿げたことを考えてしまう。

コウは柵に乗り出すように、かがんだ。


こんなにも人を好きになるなんて、夢にも思ってなかった。
こんなにも臆病な自分がいるなんて、知らなかった。

空は相変わらず青い。
今の自分の気持ちとは反比例している。
いや、ブルーな気持ちには変わりないけれども。


了に拒絶されるのが、恐い。


じわり、視界が涙で滲む。
思わず出てしまった涙に、
私はいつから弱くなったのだろう―――と、自虐的に呟いた。

風が強く吹き荒れる。
そういえば、了を初めて見たときもこんな風が吹いてたな、と思い出す。


「会えそうにない、んだけどね・・・」

「――――ッは・・・誰が会えないって?」


その声の主に気付く前に、私の身体は抱きとめられていた。









・・・了?


「っ…ごめん・・・自分勝手だけど、…ッ僕の話を聞いてほしい・・・!!」


久しぶりに全力で走ったため、息が途切れ途切れだ。
震えているコウを強く抱きしめる。


「一年前から僕は不治の病に冒されていて、唯一頼れる親友を自分の思い込みで一方的に突き放して・・・・今までずっと逃げていたんだ・・・!自分を見下すことで…ッ
こんな僕を好きになってくれる人なんていない、って・・・!

ッだけど、初めて自分のことを知ってもらいたいって、思える人ができたんだ・・・・・!


それが君だよ…、コウ…ッ!!


僕は…君のことが好きなんだ・・・ッ


僕はもう長くは生きられない…!だけど、ただ最後に僕の気持ちを君に知って欲しかった・・・、ッ!」


――――突然のことに、頭がうまく回らない。
ぐるぐる、ぐるぐる、熱い渦が身体を駆け巡って。
心臓に伝わっていく。


聞いてくれてありがとう、と了は苦しそうに笑う。

恐らく彼はもう身体がボロボロの状態であろう、顔が真っ青だ。



・・・私は何もしていないじゃないか。

了は命を削るほど走って、こっちへ向かってきたというのに。


悲しい。
嬉しい。
恋しい。
愛しい。


あふれ出すものは沢山あるというのに、出たものは自分の右手だった。
スパ―ン!と小気味のいい音が響く。
彼は少し痛そうに顔をゆがめた。


「・・・私の気持ちも聞け・・・!!馬鹿者がッ!」


次の言葉に向けて、私は大きく深呼吸をした。
そして、口を開く。


「私もこんなに人を好きになったのは初めてなんだ」



――――それはどういう意味なのか。


「お前が、了が、好きなんだ、」


途切れ途切れに伝えれば、火がついたような羞恥心が私を襲う。
やっぱ言うんじゃなかった、こんな恥ずかしい思いは沢山だ・・・

強烈な羞恥心で顔も見れない私は、下を俯こうとする。



しかし、それはかなわなかった。

気付けば、身体を引き付けられて、唇は重なっていた。
触れるだけの接吻。
唇が離れると、彼はさっきより強くコウを抱きしめてやった。


「ありがとう」



―――ああ、彼は私の心臓を壊しにきているのだろうか。
普段より駆け足で血液が身体中を巡る。

彼は照れくさそうに微笑んで、そっとコウの肩に顔を埋めた。






ハッピーエンド・レス
(終わりじゃない、これからが始まりなんだ)















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