短編 | ナノ
それから、兄さんは部屋にこなかった
母曰く、今はテスト期間中らしく、遅くまで勉強しているらしい
「精市」
「蓮二......」
蓮二が部屋に入ってきた
「青い薔薇...」
「兄さんからさ」
「喧嘩しているのか?」
おれはあの日のことを蓮二に話した
「ふむ、精羅さんはその花言葉で送ったのではないだろう。それに洒落ているな」
「洒落ている?」
「ああ、青い薔薇にはほかにも意味があってな。確か...」
胸騒ぎがしてきた
「『神の祝福』『奇跡』だ。枯れないように造花にしているから、『いつまでも続くように』だろうな」
その数日後の事だった
兄さんが死んだのは
パタパタと廊下を走る音がした
急患でも来たのだろうか
【急患、---号室の精市くんのお兄さんですって!】
世界が真っ黒に染まった
(嘘だろ、起きろよ!兄さん!)
俺の声は只むなしく空気にと散っていくのみだった
兄さんは、死んだのに俺に(泣くな)と言っている気がした
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