君は光のようだよ



体育館に入ってみれば、案の定、あの茶髪のツンツンヘアーの男子が一人でモップをかけていた。沢田君、と声をかけてみれば、彼はこちらを振り向き、大きな目を更に大きく見開いた。

「和田原さん?!どうしてここに?!」

「さっき、クラスの男子とすれ違って。あいつらも体育館掃除だったでしょ」

もしかしたら沢田君に全部丸投げしたんじゃないかって、そう続けると彼は眉を下げた。図星っぽい。

「せっかくだし手伝うよ」

「いやいや、申し訳ないしいいよ!」

「いやぁー、私の気が済まないし、ね?」

まだ何か言いたそうな表情を浮かべる沢田君だったけど、続きの言葉を待つ前に私は体育倉庫までモップを取りに行くことにした。結局は私の勝手になっちゃったけど、こうまでしないと沢田君断りそうだし、おあいこってことで。







「(やっぱり、和田原さんは凄いなあ...)」

モップを取りに行った瑞穂の後ろ姿を見て、綱吉は改めて彼女が人気者である理由を実感していた。

何でも完璧に出来るのに、彼女はそれを決して周囲にひけからしたりしない。むしろ、彼女は綱吉のような者にも優しかったような気がする。小学校の体育の授業でサッカーのチームが同じになった時も、彼女は綱吉のミスも颯爽とフォローして敵陣に乗り込んでいた。男子にも引けを取らないそのドリブルに、クラス中の男子から「アイツのいるチーム、反則すぎるだろ」と言われていたが、全くもってその通りだと思う。ダメツナである自分がいても、彼女のいるチームが負けた記憶がない。

「沢田君、私なんかついてる?」

「へ?いやいや何でもないです!」

「いや、なんで敬語?」

さっきからこっちばかり見てるからゴミでもついてるのかなーって。彼女はそう言うと、手慣れた動きでモップをかけ始めた。綱吉も急いでモップをかける。綱吉が考え事をしている間に、いつの間にか彼女は倉庫から戻ってきていた。和田原さんのことを考えていました、なんて綱吉には到底言えない。

「(本当にいい人だよなー、和田原さんって)」

クラス中の皆が自分のことをダメツナと呼ぶのに対し、彼女からそう呼ばれた記憶がない。もしかしたら、心の中ではそう呼んでいるかもしれないけれど面として呼ばれたことがないことは、結構助かっていたりする。

「よっしゃ、大体モップできたね」

「う、うん」


彼女がいた為か、思っていたより早く体育館の掃除は終わった。










「本当に、ありがとう!」

「いやいや、私が勝手に手伝っただけだから」

それじゃあ、私時間やばいからもう行くね。彼女はそう言うと、颯爽と体育館を後にした。

忙しいのに、わざわざ手伝いに来てくれた彼女に申し訳ない気持ちになるが、少し嬉しい気持ちになったのも事実。

今日は嫌なことばかりだったけれど、案外そうではないのかもしれない。綱吉は、その場で伸びをすると体育館館を出るべく足を進めた。

だが、綱吉が体育館を出ようとしたところで京子ちゃん_綱吉の好きな人とその友人の黒川花が談笑しながら歩いてくるのを発見し、その場で眺めていたところ、京子ちゃんの元に剣道部主将である持田先輩が親しげに話かけてくる様子を見て、彼は自身の失恋を悟ったのだった。

前言撤回。やっぱり今日は、嫌なことばっかりだ。





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