短編 | ナノ



歌えなくたっていい

『カイトー!!』


私は夕飯を作るカイトの背中に飛び付いた。


「わっ!?みのり…?」


カイトは吃驚しながらもしっかり受け止めてくれて。


『カイト…ごめんね…』


私はそこら辺にでもいる極々普通な中学生。


作曲なんてなかなかできるものじゃなくて、カイトにはたまにしか曲を作ってあげることが出来なかった。

歌うために生まれてきたカイトに、私はなにもしてあげられてない。


私はそれを申し訳なく思っていて…


今日、それをカイトに打ち明けた。


なかなか曲を作ってあげられなくてごめんねと。


するとカイトは何を思ったのか苦笑して言った。


「確かに僕は歌うために生まれてきました。でも、それが全てじゃない。歌えなくたって、俺はみのりといられるだけで幸せですよ」



その言葉に、私はとびっきりの笑顔を返した。




歌えなくたっていい
(貴女とともにいられれば)

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