短編 | ナノ



君が好き!

『…寒っ…』


夜、中々寝付けない私は、散歩がてら夜の街を歩こうと屋敷を抜け出せた。

私も一応妖弧だし、自分の身くらい自分で守れるから。


『…なんで最近、夜眠れなくなったんだろう』


妖弧としての血が騒ぎだしたのだろうか。

だいたいの妖弧は夜行性だし…



そんな風に考えることに夢中になっていた私は、誰かが私の後をつけていることに気付かなかった。


すると突然後ろから誰かに羽交い締めにされ、近くの壁に手を押し付けられ、身動きが取れなくなった。


「全く…妖弧がこんなんでどうするんだ…」


『!?黒羽丸!?』


そう、私を羽交い締めにしたのは、私の幼馴染みであり、初恋の人、黒羽丸で。


『なんでこんなこと…』


「お前が真夜中に無防備で歩いてるからだろ?全く…へんな妖怪に襲われたらどうするんだ…」


黒羽丸ははぁ…っとため息をついた。


う…そんなに呆れなくても…


『だって…私妖弧だし、襲われてもなんとかな「るわけないだろ?」ごめんなさい…』


半場泣きながら謝る私。

黒羽丸はそんな私を見てまたもやため息をつく。


「みのりは女なんだぞ?例え妖怪だろうと1人の女の子だ。襲われたらそのぶん心に深い傷を負うだろうし、…何より俺が嫌なんだよ」


『え…?』


最後は顔を背けボソッと言った黒羽丸。

この至近距離で私が聞き漏らすはずがなくて。


『それ、どういう…』


そう問うた私に、黒羽丸は私を強く抱き締め言った。


「好きなんだよ、みのりが…小さい頃から、ずっと…」




君が好き!


(だっていつでもみのりは、俺の味方でいてくれただろ?)

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