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窒息する夏を追って

君の狼煙をまだ見つけられない。

留めた呼吸は今でもテントの中に隠しています。

約束の海へと続くトンネル

は、いつも幽霊に邪魔されて出口が見えないまま引き返してしまうので。

骨に見立てて砂に埋めた珊瑚の死骸

を、そろそろ海に還してあげたいのですが。

地図は君の瞼の裏に描いてあるんだろう?

不戦勝のゲームで敗北を夢見るように

永遠に交わらないアステリズム 。

私だけが夏を経て、

消える 狼煙で出来た入道雲。



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『死化粧師オロスコ』
果たせない贖罪はそうなって初めて贖罪としての意味を持つのかもしれんなー、とか。
哀しくとも。


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老い続ける指でも何かを記し残すことができるのなら、
暗闇の中髪の毛一本ほどの隙間に見た一筋を。
埋もれてしまう前に見た0になる前の数字を。
統計という名の麻酔ではなく痛みを伴う貴方の名前を。
褪せない紙で。洗い流せないインクで。どうか、



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どんな悲劇も愛がすべてを解決するからもう何も話せることはない。
よく晴れた朝、焼きたてのパンの表面にバターがゆっくりと染み込んでゆく光景に何かを重ねて泣いたりするくらいなら一粒でいいのでこの手にキスを落としてくれませんか。
即物的な幸福を貪って安易な未来を手に入れる代価に何かを失ったと考えてみてはどうだろう?
ハートの形に切り抜かれた林檎の味を今にも思い出せそうで、出せない。


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『蔓延る』


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蛇口の弛んだ水道から漏れる一滴の涙でも、あらゆる過去を洗浄してくれるだけの力があるような気がする。けれど、着地した瞬間にそれまでの居場所から一番遠い場所へ流れて行く様は例えその為だけに存在する一粒であれ目を覆いたくなるような悲劇でありそれを望む事は罪深い行為に違い無いと思った。その落下音が空洞に響く鐘の音のような清潔さで私を癒したとしても、最下層に流れ着いた汚物に塗れた日々を弔う術を私は知らない。淘汰された余剰は再生の余地も無く透明度を保ったまま今にも零れ落ちそうな雫となって落下地点を探し続ける。


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初めから定められたゴールならば、切られたテープは見えていたはず。
ことごとく逃走に失敗し、あらゆるものを見送ってなお、許されることのない離脱。
旗は永遠に振られ続ける。
『走りつづけたが追いつけなかった人々の為の贋のゴール』は、走ることすら諦めた者の末路に変わり、目隠しされた観客の慈悲深い声援と拍手に血を流した。

ゴール地点数歩前。無造作に引かれたその線は全ての終わりのようでもあったし、どこまでも続く始まりのようでもあった。

どこかで空砲が聞こえた



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日毎に肥大する吐気が、裏切りへの期待を高めて行く。真実を告げた時のあなたの顔を想像すると喜びのあまり涙が溢れた。
一言目に出て来る言葉は罵声?嗚咽?どちらにしても否定の奥に確かに存在する愛は虚飾に塗れた正義と酷似した生暖かさであなたを燃やし死に至らしめるはず。僅かに残ったひとかけらの骨だけが嘘偽りなく許し合える姿だと信じたい。骨壷を満たす灰にもならない運命など。



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分かれてしまった道を振返らないよう怯えながら歩いた。暮れる青空の向こうへ、執着と終着の間で振動する不安と不審の明日へ、痛む心臓とはどこか別の方向へ、ずっと遠く。目印を見誤らなければ道はまた交わると言い聞かせながら、薄れないよう何度も何度も輪郭をなぞった。約束だけがお互いを繋いでいた。 


いつしか膨大な時が流れ、そしてついに再会の道。


老いさらばえ、変わり果てたお互いの姿に気付くことなくすれ違い、また道は分かれた。




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周到に含ませ、醜悪に孕ませた糸




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空席の静粛さは真夏の早朝に似ている。蝉が葉の裏で遺書を認めている間に靄の向こうから顔を出す陽炎の腐臭は無人のブランコが揺れる速度で漂い、停まる。
延長線上_あの冬の朝からの長い不在。空席故に存在は誇張され未だシンと鳴り響く鈴音に目を伏せる。



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