ぐだぐだ | ナノ



「終わんねー……」

皆が帰った後、放課後の教室に半田の弱々しい声が響いた。
私は、隣の席で伸びをする半田を睨みつけて言った。

「半田はいいよね。解ってやってるもんね。私さっぱり解んないよ。まだ問い16だよ」
「は!?おま、おっそ!円堂以下だな」
「とか言う半田だって、円堂が出てってから10分くらい経つけど?」
「ちげーよ。俺はおまえたちとは違って答案欄ミスっただけだ」

……そう。
私たちは今、英語のテストの居残り、をさせられているのである。
肝心の英語の教師は、「先生、出張だから」とか言って、そそくさと教室を出て行った。
そして私は、英語の回答を円堂に聞いた結果、調子にのって解ける問題も彼のヘッポコ脳に任せて書いてしまったのである。
そして、全欄うめて、ほこほことしていた一周間後だ。
……こうして居残りをしているのは。
私にそんな機会を与えてくれた当の本人は「サッカーだ!」と少し前、教室を飛び出して行った。
先ほど本人も言っていたように、半田はテストの回答欄をひとつずつずらして書いていたらしい。
どこまでも残念な男だ。

「本当に中途半端だね。世界一目指せるんじゃないかな。ちょっと半田、ギネス載ってこい」
「無理言うなよ」

隣の半端は、はぁ、とため息をついた。

「だいたいおまえ、円堂が英語をちゃんと書けてると思うか?」
「思わないね」

私が身をもって実証済みだ。
半田が椅子から立ち上がって、ひょいっと円堂の答案用紙を見た。

すると隣で「ぶはぁっ」なんて声を出して、半田が腹を抱えながら笑い転げた。
正気を失ったか、半田よ。

「笑い方まで中途半端なんだね。つーか半田、笑いすぎ」
「いや、おまえも見てみろよ!」

Q.I go to Tokyo.を過去形にしなさい
A.I go to Edo.

「ぶっ江戸、江戸!」
「【mother】が他人っ」
「ちょ、Today is Monday.『東大は問題だ』とか」
「……俺、なんかやる気なくなってきたー」
「そうだ!いいこと思いついた」
「なに?」
「私は英語が使えませんって書けばいいんだよ」
「何ソレ初歩的。……でも名案かも」
「『私は』って英訳すると何だっけ?」
「えーと、I・My・Meだから、」
「Me no english.でいいよね」
「よし、それで決まり」

私たちは答案用紙にでかでかと書き、それぞれの部室に向かった。



A.私に英語は無い




012 英語
-->ひなたさま




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