20
「なー、藤木。」
「………。」
「なーってば。」
なまえが入部してからというもの、島の奴が頻繁に話し掛けてきて正直鬱陶しい
大方なまえとの会話を取り持てとかそういった下らないものだろう
そう思って聞こえないふりをしていた所、突如眼前にタブレットを広げられた
「人の話聞けよ!知ってるか?いや、LINKVRAINSに興味の無いお前は知らないだろうけどよ…」
「前置きはいい。さっさと用件を話せ。」
「…ったく、つまんねー奴。最近LINKVRAINSにさ、新たなデュエリストが現れたんだよ。現在負け無しの連勝中!GO鬼塚やブルーエンジェルに並ぶかもって噂で持ちきりだぜ。ほら、この子!」
「ああ、そう。」
「興味無しかよ!」
大声で興奮気味に話す島に呆れつつ、タブレットの映像へと視線を向ける
そこには真っ赤な頭巾を被り、楽しそうにデュエルをするアバターの映像が残されていた
「これは…」
「お、興味持ったか?名前は『Little Red Hood』。新進気鋭のデュエリストで、どんな苦境に立っても笑顔でデュエルを楽しむ。そんな姿にファンが増えてるんだぜー。」
まるで自分の事のように話す島を意識の片隅へと追いやり、今一度映像に目を通す
アバターは幾らでも姿を変える事が出来る
容姿、性別すらも
だがこのアバターが誰なのか、理由はわからないが俺は確信を持っていた
「……なまえ?」
映像の中でデュエルを楽しむ少女のアバターに対し、俺は人知れず彼女の名を呟いた
新たな一面との出会い
―――――
Little Red Hoodは赤ずきんの意味です。