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「…そういう訳で同じクラスの奴に文句を言われた。」
「そりゃお前…正直っちゃ正直だけどなあ。」
放課後なまえと別れてから草薙さんに事の顛末を語った所、呆れたのか困ったのか微妙な表情をしながら溜息を吐いた
「気を使えって訳じゃないが、もう少し言い方を考えた方が良かったかもな。」
「なまえに謝るべきか?」
「……いや、俺にいい考えがある。」
次の日の放課後、部活を終えいつも通り草薙さんの店へ向かう道すがらなまえを呼び止める
「遊作くん、どうかした?」
呼び止められた理由がわからず首を傾げる彼女の前に俺は一つの包みを差し出した
「これ…クッキー?」
「昨日、草薙さんに教えてもらって作った。正直に感想を聞かせてくれ。」
二つ返事で了承したなまえは歪で不恰好な形をしたクッキーを口に運ぶ
「んー…ちょっとボソボソしてるかな?」
「そうか。…自分でも満足に作れないくせに昨日は偉そうな事を言って、悪かった。」
「え?ううん、遊作くんは悪くないよ!遊作くんなら正直に言ってくれると思ったから食べてもらったんだもん、正直な感想もらえてむしろ有り難いかな。」
そう言って左右に首を振るなまえ
怒ったり傷付いたりしていないのだろうか?
「私は全然、傷付いてなんかないよ。それより…遊作くんが私にクッキーを手作りしてくれた方が嬉しかったかも。」
「だが、上手く作る事は出来なかった。」
「それは私も一緒だよ。…あ、じゃあ今度は一緒に作ろっか!」
キラキラと輝くような笑顔を此方へ向け手を叩くなまえに対し、俺は固まったように首を縦へ振る事しか出来なかった
溢れるような優しさに触れて
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遊作が料理とかお菓子作りがちょっと苦手だったら可愛いなと思って書きました。