11
『…で、そのなまえを誘う事は出来たのか?』
「うるさい、黙れ。」
今日に限って持ってきていたデュエルディスクから発せられるAiの音声に若干苛立ちが募る
結局昼休みは勿論他の休憩時間すらなまえに声を掛ける事が出来ず、放課後を迎えてしまった
このまま普段通り草薙さんの所へ向かったら何を言われる事やら…
そんな事を考えていると隣を歩いていたなまえが不思議そうに首を傾げた
「遊作くん、どうかした?」
「いや、別に『大事な話があるんだ。』
「…え?」
コイツ…俺の声色を真似してなまえを呼び止めた
俺が睨んでもAiは知らぬ存ぜぬを決め込むつもりらしい、わざと視線を外している
「遊作くん、大事な話って?」
Aiの声真似に気付いた様子もなく、彼女はもう一度尋ね返した
これ以上何を取り繕っても無意味だろう
そう考えた俺はポケットから2枚分の水族館のチケットを取り出した
「草薙さんに貰った、今日まで使用可能な水族館のチケットだ。…興味があれば行ってみるか?」
「…水族館?行きたい、行ってみたい!」
気の利いた誘い文句すら一つ言えない自分自身を腹立たしく思ったものの、彼女はそんな事を気に止めた様子もなくただ無邪気に喜んでいるようだった
『ふふん、どうやら俺のおかげみたいだな。』
「お前はもう黙っていろ。」
如何にもからかうような口振りのAiを黙らせる為にデュエルディスクの音声を躊躇なく切る
視線で訴えるAiを完全に無視しつつ、嬉しそうななまえを連れて俺達は足早に水族館へと向かった
お節介のおかげとは認めない
―――――
Ai、VR空間以外では遊作呼びなんですね。