貴女の為なら自分にだって嘘を吐く
「…っう、う…」
「そんなに泣かないで、なまえ。なまえは何も悪くないんだから。」
ある日の放課後の教室
私は泣きじゃくる友達のなまえを宥めようと彼女を優しく抱きしめる
「だって……っ、まだ好きなんだもん、別れたくなかったの…!」
そう言ってぽろぽろと大粒の涙を流すなまえ
つい今し方彼女は付き合っていた男子生徒から別れを切り出され、その悲しみから声を上げて泣いていたのだ
「なまえの良さをわかってない男なんて放っておけばいいのよ。私だったら…」
『絶対になまえを悲しませたりしない』
そう言い掛けて口を噤む
私はずっと前からなまえのことが好きだった
友達として…ううん、それ以上の感情で
それでもこの気持ちを伝えたら彼女を困らせてしまう、そう考えてこの気持ちに気付かないフリをずっとしてきた
「…聞いて、なまえ。私ね…」
傷付いている今のなまえだったら、もしかしたら私の気持ちを受け入れてくれるかもしれない
そう思い、泣き顔のままの彼女を見つめる
「……葵?」
真っ直ぐ私に向けられる、キレイななまえの瞳
私の事を大切な友達として思ってくれている、なまえの視線
「きっとなまえにはもっと相応しい、素敵な人が現れると思うの。だってなまえは私の……大切で…一番素敵な友達、だから。」
「…ありがと、葵。」
未だ涙を双眼に浮かべているものの、感謝の言葉を紡ぎながら小さく笑顔を見せるなまえ
なまえが笑ってくれるなら私は幾らでも自分の気持ちを隠し、彼女の傍にいよう
貴女に最愛の人が見つかる
その時まで
貴女の為なら自分にだって嘘を吐く
―――――
葵ちゃんの片想い。