幸せ過ぎて死にそうです
「ざ、財前課長!頼まれていた資料を集めてきました!」
「ありがとう、みょうじくん。」
「は、はいっ!」
セキュリティ部長だった財前さんが課長に降格され、此方の部署へやってきてから大分時間が経っただろうか
彼の事を窓際部署に追いやられたと未だ揶揄する者もいるが、私は全くそうは思わない
セキュリティ部門よりも仕事量は多く大変な事も多いのに、財前課長は文句や弱音を吐く事もなく完璧に仕事をこなしているのだ
「はあ…。やっぱり財前課長は素敵だなあ。」
「そうだ、みょうじくん。」
「は、はははい!?」
小声ながら思わず口に出していた言葉が聞こえてしまっていたのだろうか
…もしそうだとしたら恥ずかしさで私は息耐える自信がある
慌てて口を押さえる私を見て財前課長は一瞬不思議そうな顔をしたものの、直ぐに柔らかな笑顔を浮かべた
「今日はいつもと纏っている香りが違うね。爽やかな柑橘系の香りだ。」
「……へ?」
柑橘系?
「…あ。昨日の夜からシャンプーを変えたからかもしれません。」
そう言えばいつものシャンプーが売り切れてて、昨日は違うシャンプーを買ったんだった
…でも、誰もシャンプーを変えた事なんて気が付かなかったのに
「私もこういう香りが好きでね。どんなものを使っているのか、良かったら教えてくれないか?」
「よ、喜んで!」
まさかシャンプーの香りのおかげで財前課長とほんの少しだけどお近づきになれるなんて…!
よくやった、昨日の私!
「それとみょうじくん。今夜は何か予定は?」
「いえ、特には…」
……え?
いやいや、まさかそんな漫画みたいな展開
「良ければ一緒に食事でもどうかと思ってね。」
財前課長
夕方まで私の心臓はもたないかもしれません
幸せ過ぎて死にそうです
―――――
閑職発言には笑いました。