隣のクラスのアイツ
その日は授業中にハノイの騎士が現れたと知り、授業を抜け出してLINKVRAINSへと向かった
ハノイの騎士といったものの実力の伴わないデュエリストだった為、直ぐに片付けて教室へと足を進める
授業中で静まっている階段を上っていた所、ふと階段の隅でうずくまっている女子生徒と目が合った
「みょうじ。」
それは選択授業で偶然隣の席になった事がある隣のクラスのみょうじだった
「あ、隣のクラスの……えっと…ふ、ふ…」
「藤木遊作だ。」
「そ、そう。藤木くんだ、藤木くん。」
俺が名乗れば慌てて頷くみょうじ
同じクラスではないのだから、覚えていなくとも無理はないというのに
…だが、隣のクラスは確か英語の授業中だった筈
「顔が青白い。」
「え?」
「具合、悪いのか。」
「…まあ、うん。」
そして何気なくみょうじの方へ視線を向けた所、酷く顔色が悪い
今この場へうずくまっている様子から察するに、おそらく具合が悪くなり保健室へ向かっていた途中だったんだろう
「歩けるのか。」
「うー……いや、今はちょっと…。でも大丈夫だから。藤木くんは早く授業、行った方がいいよ。」
きっとそれは嘘だ
顔色の悪さから見て、歩くのも困難なのは俺でもわかる
それに、こんな状態のみょうじを放って教室へ行く訳にもいかない
そう結論付け、俺はみょうじを背負おうと彼女に背を向けてしゃがみこんだ
「辛そうな顔をしている人間を放っていく事は出来ない。」
「いやあの、でもさ」
「早くしろ。」
「…はい。」
最初は渋っていたみょうじだったが俺に促された為、大人しく体を背に預けた
そして俺は彼女を背負ったまま保健室へと向かい始める
階段を下りる際、バランスを崩さぬようみょうじが先程よりも体を密着させれば少しだけ速まる鼓動
そんなみょうじに俺が惹かれるまで、あともう少し
隣のクラスのアイツ
―――――
隣のクラスの藤木くんの遊作視点バージョン。