隣のクラスの藤木くん


「…っ、いたた…」



私は痛む腹部を抱えながら長い保健室への道のりを歩む



何故授業の真っ最中に私が保健室へと向かっているのか、その理由はまあ割と有り触れたもので


毎月襲ってくる例の痛みをいつもは薬で何とか凌いでいるのだが、今日は飲み忘れてしまった為に痛みが我慢出来なくなってしまった

その所為で授業を途中退席し、保健室へと向かっているのだ



「あー…キツっ。気持ち悪くもなってくるし…」



吐き気まで襲ってくるとは予想もしてなかった

動くのも辛くなってきた為階段に寄り掛かって休憩していると、階段を上ってきた一人の生徒と目が合った



「みょうじ。」

「あ、隣のクラスの……えっと…ふ、ふ…」

「藤木遊作だ。」


「そ、そう。藤木くんだ、藤木くん。」



階段でばったり会ったのは選択授業で偶然隣の席になった事がある隣のクラスの藤木くんだった

でも隣のクラスは今、数学の授業中だったような…



「顔が青白い。」

「え?」

「具合、悪いのか。」

「…まあ、うん。」



何故彼が此処にいるのか尋ねようとしたものの、逆に質問されてしまい小さく首を縦へ振る

吐き気や腹痛は自分でもわかっていたが、そんなに顔色も悪かったのだろうか



「歩けるのか。」

「うー……いや、今はちょっと…。でも大丈夫だから。藤木くんは早く授業、行った方がいいよ。」


正直、大丈夫だなんて言える状態じゃない事は自分がよくわかってる

だが彼に迷惑を掛ける訳にもいかず、とりあえず藤木くんに授業へ行くよう促してみる



しかし彼は何を思ったのか私の前に背を向けてしゃがみこむ

…まさか乗れと言うんじゃなかろうか



「辛そうな顔をしている人間を放っていく事は出来ない。」

「いやあの、でもさ」


「早くしろ。」

「…はい。」



そして藤木くんは私を背負ったまま保健室へと向かい始める

私の体に振動が伝わらないよう、ゆっくり歩いてくれる藤木くんの小さな優しさが今はとても有り難い


そんな藤木くんに私が惹かれるまで、あともう少し


隣のクラスの藤木くん

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地獄の痛みというか、わかる人はきっとわかります。
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