結局私は貴方を拒めないのです
「ま、待って遊作!ストップストップ!」
「待てない。」
「何言って……っ!」
そう言うが早いか否か恋人の遊作は私の腕を引っ張り、何の前触れもなく唇を重ねる
「…っん、う…」
「なまえから甘い香りがする。」
違うよ!それは遊作が食べたチョコレートの香りだよ!…と私は視線で彼に訴える
そもそもの原因は親戚からもらった海外産のチョコレートで
お酒がたっぷり入ったチョコレートだと知らなかった私は遊作に勧めてしまい、酔ってしまった遊作にキスをされ冒頭に至る、という訳だった
…まさか、遊作がこんなに酔うなんて思ってもみなかった
「…も、十分キスしたでしょ。そろそろ離し…」
「離さない。」
幾度となく唇を重ねられ、正直言ってこっちの心臓がもたない
遊作が離してくれないのなら此方から逃げるまでと彼の体を精一杯押してみるものの、全くびくともしない
それどころか逆にソファへと押し倒されてしまった
……あ。
ヤバい、これは本気でヤバい
「なまえ。」
「お、落ち着いて遊作!多分…いや、絶対後で頭抱える筈だから…」
「好きだ。」
「……っ!?」
そんなの卑怯だ
いつもはそんな言葉、ほとんど言ってくれないのに
「なまえが欲しい。」
「…後悔しないでよ。」
「後悔なんてする筈がない。」
結局私も遊作が大好きで
酔っていてもいなくても、彼を完全に拒む事等出来ないのだ
結局私は貴方を拒めないのです
―――――
親戚から海外のチョコレートを頂いた事があるのですが、味が濃すぎて私の口には合いませんでした。