僅かな気持ちの変化
「ううー、あとちょっと…」
学校からの帰り道
ふとゲームセンターの前を通った所、入口近くで何やら真剣な顔をしながらゲームの操作をしている女子生徒を見つけた
よくよく見るとそれは同じクラスのみょうじで、彼女はクレーンキャッチャーのゲームをしているようだ
「あとちょっとで……っあー!」
どうやら失敗したらしい
大声を上げた後、恨めしそうにクレーンキャッチャーのケースを見つめていた
「みょうじ。」
「むー……あ、藤木くん?」
「それ、失敗したのか。」
「ありゃ、見られてたのかあ。」
そう言って気恥ずかしそうに頭を掻くみょうじ
そんな彼女を横目にケースへ視線を向けると中には様々なぬいぐるみが入っていた
「このリンクリボーのぬいぐるみが欲しくて挑戦してるんだけど、なかなか取れなくって。」
そう言って奥にある1つのぬいぐるみを指差すみょうじ
余程取れなかったのが残念だったんだろう、さっきからみょうじはぺったりとケースに張り付いてる
「みょうじ、リンクリボーのぬいぐるみだな。」
「え?うん、そうだけど。」
もう一度彼女が欲しいぬいぐるみを確認し、小銭を入れてクレーンの操作を始める
アームでぬいぐるみをしっかりと掴み、落とさないよう慎重に運ぶ
そして俺は取り出し口から出てきたリンクリボーのぬいぐるみを彼女に差し出した
「ほら。」
「うわあ…!藤木くん、凄い凄い!え、貰ってもいいの?」
「俺には必要ない。」
彼女は本当に嬉しかったんだろう、差し出したぬいぐるみを嬉々とした表情で抱き締めていた
「ありがとう、藤木くん。大事にするからね!」
「…あ、ああ。」
満面の笑みで感謝の言葉を告げるみょうじを見てると少し、胸の鼓動が速まった気がする
気の所為かと思ったものの暫くの間、みょうじの笑顔が頭から離れる事はなかったのだった
僅かな気持ちの変化
―――――
クリボー系はみんな可愛いです。