普段とのギャップ
「ねえちょっと待って遊作、アンタ頭おかしい。」
「何がだ。」
俺と同い年のなまえは俺の恋人であり、草薙さんの従姉妹でもあった
草薙さんからなまえの事はよく聞いていたし、まだ付き合いは浅いが彼女の事も大分理解はしてるつもりだ
それなのに何故頭がおかしいと言われなければならないんだろうか
「暇潰しに何か映画作品レンタルしてきてって言ったのに、何で全部ホラー作品なワケ!?」
「草薙さんが色々な意味で面白いからと勧めてきた。」
「…謀ったな、翔一兄ちゃんめ。」
そう言って恨めしそうに唇を噛み締めるなまえ
…確かに普段、気の強い彼女の姿からはなかなか目にする事のない光景だ
「なまえ。怖いなら返却してくるが。」
「べ、別に怖くなんてないし!全然、全く!」
「そうか。」
明らかに動揺を見せてはいるものの、自分の弱みを認めようとしない所が何ともなまえらしい
そして俺達二人は並んでホラー映画の鑑賞を始めた
「…なまえ、やはり怖いんじゃないのか?」
映画を見始めて5分も経っていないのに、なまえは俺の左腕へぴったりと張り付いて離れようとしない
いつもなら恥ずかしがって手を繋ぐ事もほとんどないというのに
「ち、ちち違うから!これはその……ゆ、遊作が怖くならないようにくっついてあげてるだけだから!」
辞書で『ツンデレ』という言葉の意味を調べたら、おそらく今の彼女の状態が例に出てくるだろう
わかりやすい言い訳が何とも可愛らしい
きっと草薙さんはこれを見越してホラー映画を勧めてきたんだな
「わかった。好きなだけくっついてるといい。」
「…っ、こ…怖いからじゃないんだからね!遊作の為なんだから!」
「十分、わかってる。」
そう言いながら腕の力を強めるなまえがいじらしくて、愛らしいと思った
普段とのギャップ
―――――
テンプレ的なツンデレ。