計算高いよりも天然の方が厄介
「ううー…もうさ、意味わかんない!後輩と二股掛けてたとか人としてどうなの……っ、うわーん!」
「とりあえず落ち着け、なまえ。飲むのか愚痴を言うのか泣くのか、せめてどれか一つにしろ。」
仕事上がりに俺の所へ有無を言わさず転がりこんできた友人のなまえは持参した酒を片手に飲む、愚痴を言う、泣くのトリプルコンボを発動している
…正直、詰めデュエルやSOLテクノロジーへの侵入より厄介な事案だ
「男ってみんなそーなの?みんな女好きなのそこの草薙翔一さん!…ぐすん。」
「何で今フルネームで呼んだんだ。…あーあ、空き缶も転がってるし、涙でスゲー顔してるぞ。」
「…もーダメ。ヤツをボコボコにしてきたけど悲しみは癒えない。」
既に酔っているのか会話すらまともに成り立たない
まさに会話のドッジボールだ
「ほらほら、今日はもう遅いから泊まってけ。明日送ってやるし、そもそもその顔じゃ外出るのも嫌だろ。」
なまえが散らかした空き缶を片付けつつ、彼女を寝室へ行くように促す
こんな事も一度や二度ではないからもう慣れっこだ
「うう…ありがと。やっぱりこういう時の翔一は頼りになるよう。」
涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになったなまえを見送り、ようやく俺は椅子へと腰掛ける
「…頼りになるっていうか、ホントは別の意味で頼りにしてほしいんだけどな。」
なまえに惚れている俺にとって、他の男の話なんざ聞きたくもないんだが
なまえに頼られると結局話を聞いてやっちまうし、面倒も見てしまう
「…これが計算じゃなくて天然なんだもんなあ。」
安心しきったように俺のベッドで眠る彼女に対し、俺は小さく苦笑を漏らした
計算高いよりも天然の方が厄介
―――――
草薙さんは苦労人。