小さなライバル
「あっ、晃くん!」
「すまないなまえ、連絡もせずに訪ねてしまって。」
「大丈夫だよ。ほら、上がって上がって。」
今日は普段より少々早めに仕事が終わった為、私は近頃なかなか会えていなかった恋人、なまえの元を訪れた
迷惑を承知で訪ねたものの連絡も無しで現れた私を非難する事もなく、彼女は笑顔で自室へと招き入れる
「にー。」
「……ん?」
リビングへと足を進めた所、何処からか何かの鳴き声が聞こえてくる
よくよく下を見ると、小さくて真っ白な子猫が彼女の足元に擦り寄っていた
「そっか、晃くんは会うの初めてだったよね。この子は友達の飼い猫が産んだ子猫ちゃん。男の子で名前はシロっていうんだ。」
「シロか、いい名前だな。小さくて可愛らしい……っと。」
そう言ってなまえが抱き抱えた子猫…シロに触れようとしたものの何故か子猫は私に触れられるのが嫌なのか、彼女の手からすり抜け逃げられてしまった
「…あれ?シロってば初対面の人にも甘える位、人懐っこい子なのに。」
「はは、どうやら私はあまりシロに歓迎されていないようだな。」
その言葉通り、なまえが料理をしている間もシロは彼女にべったりで
困った彼女が私にシロを預けるものの、直ぐに逃げ出してキッチンへ戻る始末だった
「もー…何で今日はいい子にしててくれないのかな。折角晃くんが来てくれてるのに。」
テーブルに手料理を並べたなまえはミルクを舐めているシロの頭を困ったように眉を下げながら撫でる
「もしかしたらシロはなまえ、君に近付く男が気に入らないのかもしれないな。」
「ええ?」
すると言葉を理解しているかのように「にゃあ」と鳴き声を上げるシロ
「…だが、私もなまえの事なら一歩も引かないぞ。」
眼前でなまえにじゃれつく小さなライバルに対し、私は宣戦布告の言葉を呟いた
小さなライバル
―――――
ネコ飼いたいです。