キーホルダーの導き
『落とし物、落とし物デス。』
平日の早朝時
学校へ向かおうと玄関の扉を開けた所、掃除ロボットが何かを持って此方へ寄ってきた
『何だコレ?古びたキーホルダーだな。』
「お前には関係ないものだ。」
Aiの言動を一蹴しつつロボットから少し古びたクリボールのキーホルダーを受け取り、少しの間思い出に浸る
そのキーホルダーは10年前に俺が保護された後、一時的に検査入院をした病院で出会った少女から貰ったものだった
俺を担当していた看護師の子供で、確か名前はなまえと名乗っていた
過去の記憶がなく不安を覚えていた俺をよく病室から引っ張り出し、共に中庭で遊んでいた記憶がある
「あれからもう10年か…。」
退院時になまえからお揃いのキーホルダーを貰って以降、病院へ足を運ぶ機会は無かった為その後彼女に会った事はなかった
だがきっと、彼女は元気にしているだろう
そう結論付けそっとキーホルダーをポケットに仕舞い、俺は学校へと向かった
そして登校したはいいものの、何だか教室内が騒がしい
生徒達の話に耳を傾けた所、どうやら転校生がこのクラスへやってくるようだった
中途半端な時期に転校してくるものだと考えていた所、教師が一人の少女を紹介する
「みょうじなまえです。皆さん、これから宜しくお願いします!」
明るく屈託のない笑顔を浮かべるみょうじと名乗る少女
何処となく見覚えのあるその顔にもしやと思い、彼女の持つ鞄へ視線を向ける
するとそこには俺が持っているものと同じクリボールのキーホルダーが付けられていた
「また会えたね、遊作くん。この子のおかげかな?」
「…そうかもしれないな。」
隣に座ったなまえは教師に見つからないよう、こっそりと俺に話し掛けながらキーホルダーをつつく
確かに、コイツのおかげかもしれない
ポケットの中のキーホルダーへ触れながら、俺はなまえとの再会に小さく口元を緩ませた
キーホルダーの導き
―――――
クリボール可愛かったですね。