二人だけのコンサート


日没が迫ってきたある日の放課後

人も疎らになった校内を歩いていた所、何処からか何かの音色が聞こえてくる



「これは…楽器の音か?」


風に乗って運ばれてくる優しい音色の出所を探る為に校外へ出た所、どうやら音は裏庭から聞こえてくるらしい

裏庭を覗いてみると見覚えのある女子生徒が一人でフルートの演奏をしていた



「みょうじ。」

「え?うわっ、藤木くん!?…びっくりしたあ。」



そこにいたのは同じクラスのみょうじだった


驚かせないよう静かに声を掛けたつもりだったが、どうやら逆に驚かせてしまったらしい

慌ててフルートを一回転させてしまったみょうじを見つつ、次いで言葉を続ける



「練習か?」

「そうなの。明後日にコンクールがあるからその練習。ソロパートもあるから頑張らなきゃいけないんだけど…何だか心なしか、手が震えて上手くいかなくって。」



そう言って俺に片手を見せるみょうじ

確かにその手は緊張の為か、微かにカタカタと震えていた



だが俺は知っていた

彼女が早朝や昼休みは勿論、許可を取って楽器を持ち帰り自宅でも練習していた事を



「大丈夫だ。きっと上手くいく。」


しかし俺に気の利いた事等言える筈もなく、上記の言葉を紡ぎながら気持ち程度に少し頭を撫でる


「…うん!ありがとう、藤木くん。」


幼子扱いし過ぎたかと一瞬反省しかけたものの、彼女は満面の笑みを浮かべ、俺に感謝の言葉を紡ぐ

するとみょうじは俺の片腕を軽く引き、そして小さくはにかむ



「あのね藤木くん…良かったら私の演奏、聴いててもらえないかな?やっぱり聴いてくれる人がいると違うだろうし。」


「わかった。此処で聴いてよう。」



俺が了承すれば嬉しそうに頷くみょうじ

自身の胸が少し温かくなったのを感じつつ俺とみょうじ、二人だけのコンサートが幕を開けた


二人だけのコンサート

―――――
フルートとトランペットで迷った結果、フルートに決定。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -