さようなら、私の愛した人


「なまえ、か?」

「…もしかして、晃くん?わあ、久しぶりだね。」



私が仕事を終え帰路に就こうとしていた所、何処か見覚えのある姿を見掛けた為何気なく声を掛ける

振り返った人物はやはり私の見知った女性、なまえだった



「学生の時以来だっけ?…あ、でも別れてからはほとんど話もしてなかったかな。」

「…あの時はすまなかった。」

「あはは。いいよ、もう過ぎた事だもん。」



当時学生だった私となまえは所謂恋人同士という間柄だった


だが…葵に楽をさせてやりたいという想いからSOLテクノロジーへの入社を目指し今以上に勉強へ打ち込んだ結果、彼女とのすれ違いが生じ別れてしまう事に

その後友人関係へと戻ったのだが彼女に対して後ろめたい気持ちがあった私はそれ以降、なまえと会話をする事はなかったのだ



「晃くんは昔から何にでも一生懸命だったもんね。」

「なまえこそ、友人だけでなく教師にも厚く信頼されていただろう。」



久しぶりの再会で昔話に花が咲く中、封じ込めていた彼女への淡い気持ちが揺れ動く

あの時なまえと別れてしまった事を後悔していた私は、未だ彼女への未練を断ち切れずにいたのだ



もし叶うのならば、彼女とやり直す機会が欲しい

そんな事を考えながら言葉を紡いでいた所、なまえの左手に何か光るものがある事に気が付いた



「なまえ、それは…」


「あ、これ婚約指輪。もう直ぐ私ね、結婚するんだ。」

「…そうか。」



キラキラと輝く指輪のように幸せそうな笑顔を浮かべるなまえ

彼女はもう、素晴らしい人生の伴侶を見つけていたんだな



「おめでとう、なまえ。君の幸せを心から祈っているよ。」

「ありがと、晃くん。じゃあ私、これから習い事だから行くね。」


私の言葉に感謝を告げ、手を振りながら雑踏の中へと消えていくなまえ



「…さようなら。私が最も愛した人、なまえ。」


人知れず呟いた言葉は夜の闇に呑まれ、そして消えていった


さようなら、私の愛した人

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財前さんの夢に付けるタイトルは気恥ずかしいものが多いので、書いてる自分も何か恥ずかしいです。
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