手の掛かる子程可愛い
夏休みも終盤に差し掛かってきたある日、突然友人のなまえが俺の元へとやってきた
手付かずの真っ白な課題を持って
「…どうして課題に一切手を付けた形跡がないんだ。」
「そりゃあ勿論、夏休み中遊びまくってたからだよ!だって折角の夏休み、いつ遊ぶの?今でしょ!」
「CMの真似をしてる暇があったら手を動かせ。…一つも夏休み中の課題が終わってないなんて洒落にならないぞ。」
明らかに反省の色がないなまえに対し、大きな溜め息を吐く
休みは残り一週間もないというのに、一体どうするつもりだったのか
「だって一人で考えてても全然わかんないし、どうせなら遊作に教えてもらった方が早く終わるかなーって。」
「教えてもらいたかったらもっと早く持ってこい。俺が留守にしてたらどうするつもりだったんだ。」
「え?遊作が帰ってくるまで玄関で待ってる。」
当然と言わんばかりの表情のなまえに対し、本日二度目の溜め息が出てしまう
彼女は天然なのか、それとも考えなしなのか
「だって遊作、私が困ってたらいつも助けてくれるじゃん。ホントは優しいんだって知ってるんだから。」
「…余計な事を言うなら課題、見てやらないぞ。」
「ごめんごめん、今からちゃんとやるから。」
そう言って慌てて課題とにらめっこを始めるなまえ
俺だって別に彼女を鬱陶しく思っている訳じゃない
「手の掛かる子程可愛い、か…。」
前に草薙さんが言っていた言葉だが、もしかしたら彼女もそうなのかもしれない
課題に四苦八苦するなまえを横目で見つつ、俺は小さく口元を緩ませた
手の掛かる子程可愛い
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提出物は期日までに仕上げましょう。